Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(前編)』

『真実の継承者(前編)』




シルバニア公国
メーヴェルヴァーゲン街道



ブランドブレイ王国とシルバニア公国を結ぶ重要な街道の一つ、メーヴェルヴァーゲン街道。
海と森の間を抜けるように、若干のカーブと共に南北に延びている。

開拓時代に移民達が踏み固めたとも言われているこの街道、あちこちで石畳による舗装工事が着々と進められている。
だが、それはまだほんの一部の区間であり、大部分は未舗装のまま残された状態になっている。


翌日。


セディ 「ふっ。また寝不足か?ウィリアム。」

ウィリアム 「あ、ああ。ちょっと、な。」

ローラ 「どうせいつもの事でしょー。
 ……ってあれ?
 どうしてマリーが顔赤くするの?」

マリー 「い、いえ、なんでもありませんわ。」

ウィリアム 「セディ、本当にここにエンディルが現れるのか?」

セディ 「ふっ。空間の不安定さからいけばほぼ間違いない。」

サード 「よし、じゃあ騎士団を展開させよう。
 でも展開っていうとなんか数学を思い出しちゃうなぁ。
 2a分の−b±ルートb二乗マイナス4ac……」

ウィリアム 「思い出すなよ。
 っていうか疑問なんだけどよ、
 騎士団って他人の推測で動いていいのか?おい?」

サード 「いいんじゃないの?よくわかんないから騎士団長に聞いてみて。」

ウィリアム 「だからお前に聞いているんだよ、サード。」

マリー 「ウィル、貴方の負けのような気がしますわ。」

ウィリアム 「……まともに質問した俺が馬鹿だったみたいだな。」

ローラ 「それにしてもメーヴェルヴァーゲン街道って変な名前だよねー。」

サード 「昔々、メーヴェルさんというそれは美しい女性がここに住んでいました。
 でもある日、その家は本人の知らないところで売りに出されてしまったのです。
 それも破格の安さで。」

ローラ 「え?ヴァーゲンってそのバーゲンだったの?」

サード 「だったらどうしようかなぁと。」

マリー 「要するに嘘なんですね?」

サード 「はい。」

ウィリアム 「即答するなよ、おい。」

マリー 「一瞬でも信じようとしてしまいましたわ。」

セディ 「ふっ。家具運搬車街道、とある言語でそういう意味だ。」

ローラ 「え?」

セディ 「かつてこの地方がまだ森に覆われていた頃、
 人々は新天地を求めて家具と共にこの地へと移住してきた。
 それがこの街道名の由来だ。」

ウィリアム 「セディ、何故お前はそんなことを知っているんだ?」

ローラ 「あやしいー。嘘なんじゃないのー?」

セディ 「ふっ。そう思ったら別に信じなくてもよい。」

ローラ 「あ、なんかその言い方いじわるー。
 だからおっちゃん呼ばわりされちゃうのよ。
 わかってる?」

セディ 「ふっ。そう呼ぶのは貴様一人だろうが。」

サード 「おっちゃん。」

ウィリアム 「……おっちゃん。」

セディ 「ふっ。そうか。貴様ら二人も血の海を見たいというか。」

ウィリアム 「はっはっは、冗談じゃないかセディ。やだなぁ。」


ヴ……ン……。

ローラ 「!?」

サード 「静かにっ!」

ウィリアム 「この音は……」

セディ 「ふっ。どうやら予想は的中したようだな。」

サード 「!!! 7月騎士団、総員戦闘準備!
 奴らを一歩たりともシルバニアに近づけるなっ!!!
 ローラ、側を離れないで。危険だから。俺が守る。いいな?」

ローラ 「え?
 あ、うん。
 ……サードって……真面目な一面もあるんだ……。」

サード 「なんてね。一度ぐらい、そういう台詞言ってみたいねえ。
 なにはともあれ危険だから離れないでね。
 足下うろうろされると困るし。」

ローラ 「……前言撤回。」

セディ 「!!!」

ウィリアム 「どうした、セディ!?」

セディ 「……森の中だ。」

ウィリアム 「え?」

セディ 「森の中に何かが転移してくる。」


だっだっだっ

ウィリアム 「おい、セディっ!!! ……ちっ!」

マリー 「ウィル!?」

ウィリアム 「マリー、お前はローラと一緒にサードの側にいろ。いいな!」


だっだっだっ

マリー 「ウィル……」


▽……。



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