『真実の継承者(前編)』
シルバニア公国 メーヴェルヴァーゲン街道 ブランドブレイ王国とシルバニア公国を結ぶ重要な街道の一つ、メーヴェルヴァーゲン街道。 海と森の間を抜けるように、若干のカーブと共に南北に延びている。 開拓時代に移民達が踏み固めたとも言われているこの街道、あちこちで石畳による舗装工事が着々と進められている。 だが、それはまだほんの一部の区間であり、大部分は未舗装のまま残された状態になっている。 |
「おい、セディ、どこに行く気だっ!?」
「ふっ。前方の木々の間を見ろ。」
「!? 空間に亀裂がっ!?」
「ふっ。やはり真打ちは背後から仕掛けてくる気だったみたいだな。
……惜しむべきは我が師匠愛用の抗魔の帽子がないことぐらいか。
だがどちらにしろ、我が理想郷をここで失うわけにはいかないのだ。」
「理想郷?」
やはりまた会ったな。
EN SVEF... !」
セディとやら、
そしてあの時の青年よ。」
「……なぁセディ、どうして奴がここに転移してくるってわかったんだ?」
「ふっ。勘だ。」
「勘?」
「……人としての制約を越えるが故、
空間の歪みを感じ取ることが出来る……なるほどな。
その程度の能力は奴の肉体から受け継いでいるということか。
だが、それ以外の面ではどうかな?」
「……ユメル・ヴァイス・ガーディエル
煌々たる炎よ 己が力を解放し破裂せよ!
イクスプロージョンっ!!!」
「はぁっ!!!!!」
「ゼルイリアスの直前で爆発が止まったっ!?」
理力をそのまま衝撃波にして爆発を止めたのか?
……どうやって?」
「目に見えて遅い爆発など、止めるにはたやすい。
そうでなくてもお前達の魔導では、
月を介した魔導では所詮その程度の力しか出ないってことさ。
抵抗は無駄だという事を早く悟ったらどうだ?」
「どうやって……手から衝撃波を出したんだ?」
「人として最終形態にまで進化していないからお前らにはわからないのさ。」
「ふっ。まさか魔導そのものが防がれるとはな。
つまり貴様の言葉を借りれば、
貴様らエンディルは人として進化しているとでもいうのか?」
「違うな。
エンディルも所詮は元をたどれば、生まれた世界は違えども同じ人間だ。
だが、我ら指導者は違う。
そういうことだ。」
「……エンディルが人間だと?」
「ああ、そうだ。
魔導の暴走により滅びた世界の末裔、
それがエンディルであり我らだ。
青き髪がその証拠だ。」
「青い髪と肌、の二つじゃないのか?」
「かつては我らとて白き肌を有していたのだ。」
「!?」
「無駄話は終わりだ。
もう一度お前らに質問をしよう。
あくまでまだ抵抗するのか、あるいは我らに従うのか。
どっちだ?」
「……ふっ。
ウィリアム、一端後退だ。
体勢を立て直してからにするぞ。」
「おうっ!」
「!?……逃がすかっ!」