Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(前編)』

『真実の継承者(前編)』




シルバニア公国
メーヴェルヴァーゲン街道



ブランドブレイ王国とシルバニア公国を結ぶ重要な街道の一つ、メーヴェルヴァーゲン街道。
海と森の間を抜けるように、若干のカーブと共に南北に延びている。

開拓時代に移民達が踏み固めたとも言われているこの街道、あちこちで石畳による舗装工事が着々と進められている。
だが、それはまだほんの一部の区間であり、大部分は未舗装のまま残された状態になっている。


街道近くの森の中

ゼルイリアス 「なにごちゃごちゃ言っている?
 覚悟出来たのか?
 それとも、
 素直に降伏するのか?」

セディ 「ふっ。
 笑止、それ程度で屈すると思うか。
 ガレス・ディ・ゼクトゥレス……

ウィリアム (何だ?聞いたことのない魔導詠唱……?)

セディ凝縮せし風よ 欠けろ! スチームイクスプロージョン!!!


バンッ!

ウィリアム 「!?」

ゼルイリアス 「ぐっ!?」

ウィリアム 「なんだ?何が起こったんだ?見えなかったぞ?」

セディ 「ふっ。大気中の水分を沸騰させ水蒸気爆発を起こしたのだ。
 見えなかったのも無理はあるまい。
 炎が出ないため、爆発の瞬間を肉眼で捕らえることはほとんど不可能だからな。」

ウィリアム (だが、そんな魔導をどこで?一般には知られていない魔導だ。
 それも、おそらく禁呪レベルの威力を持つ魔導……。
 もしかして、セディの持つ魔導原本に書かれている技なのか……?)

ゼルイリアス 「……さすがに今のはこたえたな。」

ウィリアム 「!?」

ゼルイリアス 「だが、所詮は月を介した魔力。その程度しか威力は……」

ウィリアム (……やるしかない。)

セディ 「ふっ。効いていないということか。」

ウィリアム 「……南天に輝けし4つ星が1つ、西星ロウクスよ、俺に力を。」
(思い出せ。初等学校で初めて魔導を習ったときのことを。
 1、『リード・フォース』、掌に理力を導き、)

セディ 「ウィリアム!」

ウィリアム 「セディ、下がっててくれ。」
(2、『インクルード』、理力を解放した掌に魔力を含み、)
メレルラン・リ・ネ・レ……

ゼルイリアス 「今のでお前らの魔導では無駄だと分かったはずだが?まだ試す気か?」

ウィリアム恒星ロウクスに我願う 風よ、渦となりて全てを切り裂けっ!!!
(3、『イーミット』、そして、発動させるっ!!!)
トルネードっ!!!!


ごぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!

ゼルイリアス 「なにっ!?」

セディ 「ふっ。木々が……岩が……空に舞うだとっ!?馬鹿なっ!!??」

ウィリアムおおおおおおおおっ!!!!!


ごぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!

ゼルイリアス 「ぐぁぁあああああああああああっ!!!」

セディ 「…………ふっ。なんなのだ、この桁外れの威力は。
 これがウィリアムの理力なのか?
 それとも西星ロウクスの魔力なのか?あるいはその両方……。」

ウィリアム 「げほっ……げほっ。
 ……はぁ……はぁ……。
 やった……か?」

ゼルイリアス 「…………いや、さすがに……応えたな、今のは。」

ウィリアム 「まだ……生きていやがる……。」

ゼルイリアス 「青年よ、貴様の腕は認めよう。
 だが、その体では魔力負荷が大きすぎたようだな。
 それだけ吐血しているのであれば、もう満足に戦えまい。
 いや、自由に動くことすらままなるまい。」

ウィリアム 「……そうみてぇだな。残念だけどよ。」
(ダメだ……体が……きしんでいる。立っているのがやっとだ。
 もう攻撃に抵抗することすら出来そうにない……。)

ゼルイリアス 「だが、どうやら満足に戦えないのはお前だけではないみたいだな。」

セディ 「ふっ。どういうことだ?」


ピシッ

ゼルイリアス 「……我の鎧が、貫通されるとはな。
 予想外だ。いや、初めての事だ。
 我一人の元、制圧できるほどこの世界の魔導文明は脆くはなかったようだな。
 300年前、フィリスディールが負けたのも納得がいく。」

ウィリアム 「フィリスディール?」

セディ 「ふっ。ラファエル王国崩壊のきっかけとなった青き肌を持つものの名だ。」

ゼルイリアス 「……だとすれば、
 バルセザリアール様の手を煩わせぬ為にも、
 我ら人の限界を超えし者、いや、人として最終進化を遂げし者、
 全力を以てまずこの世界の制圧にあたる必要がありそうだな。」

ウィリアム 「ちょっと待てっ!お前達にまだ仲間がいるのかっ!?」

ゼルイリアス 「……一端、引き上げるしかないな。
 再び世界の扉が開くとき……即ち300年後、
 我は他の仲間と共に再び征服しに来る。
 他の世界の征服は後回しだ。この世界を優先させる。」

ゼルイリアス 「セディ、と言ったな。
 奴の肉体を手にしているならば、300年後に再び会うこともあるかもしれないな。
 楽しみにしているぞ。くくっ。

 XI DEXI... FE KVWE... !」



ヴ……ン……

ウィリアム 「消えた……。」

セディ 「ふっ。どうやらエンディル兵達も去ったようだな。戦の音が消えた。」

ウィリアム 「……終わった、のか?」


▽……。



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