『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 王城3階 作戦会議室 白銀の都、シルバニア。 市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。 その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。 |
「この部屋が作戦会議室ですわ。」
「暗くてよく見えないが……かといって、明かりをつけるわけにもいかないか。」
「ダメですわ、明るくなると眠くなってしまいますの。」
「……それはそれで問題があると思うんだが。」
「『印刷(プリントアウト)』でしたっけ?」
「『刷り込み(インプリンティング)』だ。」
「近かったですわね。」
「いや、近いようでかなりかけ離れていると思うんだけどな。
とりあえず、
本棚にしまわれている書類やノートをどかさないとな。」
「何だこの本?『建築工学…光あふれる空間』?」
「きっと先日の兵隊長召集会議の時に誰かが忘れていったのですわ。」
「兵隊長の中に元建築家でもいるのか?」
「いませんわ。」
「……まぁいいや。次。『編みもの100選』」
「それもきっと兵隊長の誰かの忘れ物ですわ。」
「いいのかよ、会議に本を持ち込んで。
……『女性の口説き方』に『北方に眠る古代の鉱床』
なんか全然ジャンルがばらばらだな。」
「『第7章 危険性について
かつてこの世界には約3000の鉱物が眠っていたと伝承されているが、
その中でも現存が確認されている物を取り上げ……』」
「『どのような合成が危険であるかをこの項では説明しようと思う。
中には爆発の危険性がある物も含まれるので取り扱いには……』
って持ち主は一体どうしてこんな所に栞を挟んだんだ?」
「前者がどなたの本かは存じませんが、
後者はマルス師団長の持ち物のはずですわ。
真夜中にこの部屋で読まれていたのを目撃いたしましたわ。」
「兵隊長はともかく
師団長が召集会議の場にこんなもの持ってくるなよな、
まったく。」
「本以外にもこんなものもありますわ。」
「その包装紙はなんだ?」
「恐らく、ミルククッキーの包み紙ですわ。」
「捨てろよそんなもの。」
「副将軍の持ち物だから誰も文句言えないのですわ。」
「……この本棚って個人のロッカー代わりなのか?
まぁいいや。とりあえずこれだけ空いていれば
隠し扉のボタンを押せるだろう。」
「扉のボタン……棚の奥にあるでっぱりのことですの?」
「ああ、それだ。
……レミティアーナ女王陛下、
俺が合図をしたら同時にその棚の奥のボタンを押して……」
「いたぞっ!賊は作戦会議室だっ!!!」
「!?」