『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 牢獄 四方全てを石で囲まれた牢獄。 金属の格子が外界との接触を阻むかのように、固く冷たく地面から天井へと伸びている。 ここが王都のどこに位置しているのか、中からではわからない。 ただ言えることは一つ。陽の当たる地上ではないということ……。 |
(俺は、このまま牢獄に入れられたままなのか?)
(足音!? 誰かが来る?)
「とんだ災難だったな、アシスト君。」
「……?」
「今回の戦でこの国が最も損害を被っている関係上、
気が立っていてちょっと神経質になりすぎていてな。
無理もない、師団長が6人中3人も大怪我で戦線離脱してしまったのだから。」
「……そんなに不利な状況なのか?」
「ああ。国民に混乱を招かないために情報規制を牽いてはいるが、
お世辞にも物資・人材の両面に於いて決して有利とはいえない。
かくいう俺も臨時に師団長を務めているにすぎなくてな。」
「臨時……師団長?」
「ああ。俺は別に王立軍に所属しているわけじゃないんだが、
人材不足のためにかり出されることになってな。
ま、愛しい妻と二人の娘を守るためだ、断るわけにはいかない。」
「……それだけの、理由で?」
「時には、例え命を懸けてでも守らなくてはならないものもある。
たまたま俺にとってはそれが妻子だっただけの話だ。
俺は、君にどんな理由があるのかはわからない。」
「…………。」
「だが君の祖先もまた先の大戦の時、このシルバニアに訪れている。
そしてあの隠し部屋に立ち入ることを許されていた。
そこには当時の国王と君の祖先しか知らない何かの約束があった。」
「…………。」
「!?」
「そうと分かった以上、君をこれ以上拘束する必要はどこにもない。
こんな狭い牢獄で息苦しかっただろう。
すまないね。」
「いや、こっちこそ挙動不審だったから文句は言えねぇよ。」
「……アシスト君。
君に案内したい場所がある。
ついて来てくれるね?」
「あ、はい。」
「……レナード、階段の側に隠れているのは分かっている。お前もついてこい。」
「先生にはお見通しでしたか。」
「お前は、さっきの……。」
「仲直りはあとでゆっくりしてくれ。夜が明ける前に移動するぞ。
戒厳令が引かれている今、この国にいる師団長が3人中2人も同時に
外出したのがバレては色々とマズイことがあるからな。」
「一体こんな真夜中にどこに行くんです?」
「君の祖先の眠る場所に。」