Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(後編)』

『真実の継承者(後編)』




シルバニア王国
牢獄



四方全てを石で囲まれた牢獄。
金属の格子が外界との接触を阻むかのように、固く冷たく地面から天井へと伸びている。

ここが王都のどこに位置しているのか、中からではわからない。
ただ言えることは一つ。陽の当たる地上ではないということ……。

ウィルバー (俺は、このまま牢獄に入れられたままなのか?)


こつん こつん こつん


ウィルバー (足音!? 誰かが来る?)

ラグランジュ 「とんだ災難だったな、アシスト君。」

ウィルバー 「……?」

ラグランジュ 「今回の戦でこの国が最も損害を被っている関係上、
 気が立っていてちょっと神経質になりすぎていてな。
 無理もない、師団長が6人中3人も大怪我で戦線離脱してしまったのだから。」

ウィルバー 「……そんなに不利な状況なのか?」

ラグランジュ 「ああ。国民に混乱を招かないために情報規制を牽いてはいるが、
 お世辞にも物資・人材の両面に於いて決して有利とはいえない。
 かくいう俺も臨時に師団長を務めているにすぎなくてな。」

ウィルバー 「臨時……師団長?」

ラグランジュ 「ああ。俺は別に王立軍に所属しているわけじゃないんだが、
 人材不足のためにかり出されることになってな。
 ま、愛しい妻と二人の娘を守るためだ、断るわけにはいかない。」

ウィルバー 「……それだけの、理由で?」

ラグランジュ 「時には、例え命を懸けてでも守らなくてはならないものもある。
 たまたま俺にとってはそれが妻子だっただけの話だ。
 俺は、君にどんな理由があるのかはわからない。」

ウィルバー 「…………。」

ラグランジュ 「だが君の祖先もまた先の大戦の時、このシルバニアに訪れている。
 そしてあの隠し部屋に立ち入ることを許されていた。
 そこには当時の国王と君の祖先しか知らない何かの約束があった。」

ウィルバー 「…………。」


かちゃん


ウィルバー 「!?」

ラグランジュ 「そうと分かった以上、君をこれ以上拘束する必要はどこにもない。
 こんな狭い牢獄で息苦しかっただろう。
 すまないね。」

ウィルバー 「いや、こっちこそ挙動不審だったから文句は言えねぇよ。」

ラグランジュ 「……アシスト君。
 君に案内したい場所がある。
 ついて来てくれるね?」

ウィルバー 「あ、はい。」

ラグランジュ 「……レナード、階段の側に隠れているのは分かっている。お前もついてこい。」

レナード 「先生にはお見通しでしたか。」

ウィルバー 「お前は、さっきの……。」

ラグランジュ 「仲直りはあとでゆっくりしてくれ。夜が明ける前に移動するぞ。
 戒厳令が引かれている今、この国にいる師団長が3人中2人も同時に
 外出したのがバレては色々とマズイことがあるからな。」

ウィルバー 「一体こんな真夜中にどこに行くんです?」

ラグランジュ 「君の祖先の眠る場所に。」


▽……。



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