『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 王城3階 作戦会議室 白銀の都、シルバニア。 市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。 その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。 |
「……ボイス副将軍は?」
「まだ来ていないようだな。定例会議の開始までにはまだ時間がある。」
「出来ればその前にアシスト君を紹介したかったのだが……。」
「……レナード、お前もこの部屋にいるってことは、一応軍団長なのか?」
「一応とは失礼な。これでもれっきと師団長を務めている。」
「師団長?軍団長ではなくて?」
「かつてこの国に軍隊と呼べる機構は存在していなかった。
都市単位の小規模な衛兵制度はあったものの、
あまり訓練されていない一般市民が鎧兜を身に纏ったに過ぎない。」
「300年前の戦いで、自国の軍を持たず旧宗主国ブランドブレイの
力に頼ることになってしまったこの国は今から200年前、
公国から王国へと昇格すると同時に王立軍を設立した。」
「本来ならば、いくつかの旅団を束ねて師団が結成され、
その師団が束ねられて軍が編成される。
だがこの国では旅団という単位は存在していない。」
「そしてまた、編成規模の問題により軍団という
大規模な統率単位も存在していない。
それ故、この国では『師団長』が事実上の軍司令官となっている。」
「ま、
他国と同様に軍団長という呼び名でも間違いではないが、
この国ではそれを師団長と称している、ということだ。」
「ふぅん。」
「……しかし副将軍、遅いな。」
「大方、ミルククッキーでも買いに行っているんだろう。」
「え?クッキー?なんで?」
「早いのぉ、皆。
ふむ?
見慣れない顔があるが?」
「ボイス副将軍、この青年はセリフォスの……」
「ラグ、ちょっと待ってくれ。
とりあえずこの焼きたてのミルククッキーを
お菓子箱に移してから……」
「……な?」