Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(後編)』

『真実の継承者(後編)』




シルバニア王国
王城3階 作戦会議室



白銀の都、シルバニア。
市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。

その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。

そして、翌朝。


ラグランジュ 「……ボイス副将軍は?」

レナード 「まだ来ていないようだな。定例会議の開始までにはまだ時間がある。」

ラグランジュ 「出来ればその前にアシスト君を紹介したかったのだが……。」

ウィルバー 「……レナード、お前もこの部屋にいるってことは、一応軍団長なのか?」

レナード 「一応とは失礼な。これでもれっきと師団長を務めている。」

ウィルバー 「師団長?軍団長ではなくて?」

ラグランジュ 「かつてこの国に軍隊と呼べる機構は存在していなかった。
 都市単位の小規模な衛兵制度はあったものの、
 あまり訓練されていない一般市民が鎧兜を身に纏ったに過ぎない。」

ラグランジュ 「300年前の戦いで、自国の軍を持たず旧宗主国ブランドブレイの
 力に頼ることになってしまったこの国は今から200年前、
 公国から王国へと昇格すると同時に王立軍を設立した。」

ラグランジュ 「本来ならば、いくつかの旅団を束ねて師団が結成され、
 その師団が束ねられて軍が編成される。
 だがこの国では旅団という単位は存在していない。」

ラグランジュ 「そしてまた、編成規模の問題により軍団という
 大規模な統率単位も存在していない。
 それ故、この国では『師団長』が事実上の軍司令官となっている。」

ラグランジュ 「ま、
 他国と同様に軍団長という呼び名でも間違いではないが、
 この国ではそれを師団長と称している、ということだ。」

ウィルバー 「ふぅん。」

ラグランジュ 「……しかし副将軍、遅いな。」

レナード 「大方、ミルククッキーでも買いに行っているんだろう。」

ウィルバー 「え?クッキー?なんで?」


がちゃっ


ボイス 「早いのぉ、皆。
 ふむ?
 見慣れない顔があるが?」

ラグランジュ 「ボイス副将軍、この青年はセリフォスの……」

ボイス 「ラグ、ちょっと待ってくれ。
 とりあえずこの焼きたてのミルククッキーを
 お菓子箱に移してから……」

レナード 「……な?」


▽……。



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