Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(後編)』

『真実の継承者(後編)』




シルバニア王国
王城3階 作戦会議室



白銀の都、シルバニア。
市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。

その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。

ボイス 「なるほど、君がアシスト家の。
 おおよその状況は把握した。
 後ほど詳しい事は聞くとして、もう一つ質問がある。」

ウィルバー 「なんだ?」

ボイス 「セリフォスに美味しいクッキー屋はあるかね?」

ウィルバー 「……は?」

レナード 「ボイス副将軍なりの冗談だ。
 いや、恐らく本気だとは思うが、聞き流してくれ。
 と……そろそろ被害状況報告が届く時間だな。」


…………こんこん。

エリーゼ 「エリーゼ=ラントシュタイナー城壁守備隊長です。入ります。」


がちゃっ


ラグランジュ 「いつも時間にピッタリだな、ラントシュタイナー君は。」

ウィルバー 「!?」

エリーゼ 「…………? あの、私の顔に何か付いてます?」

ウィルバー 「あ、い、いや……目と鼻が……じゃなくて、えーと。」

ラグランジュ 「紹介しよう。
 この都市の城壁守備隊長を務めているエリーゼ=ラントシュタイナー君だ。
 そしてこちらはセリフォスから来たウィルバー=アシスト君。訳あってここにいる。」

エリーゼ 「はい、以後宜しくお願いいたします、アシストさん。
 ……では早速、バレンタイン港で起きた先週の戦いについて
 詳細な報告書ができあがったようですのでご報告いたします。」

ボイス 「うむ。」

エリーゼ 「まず第1及び第3の師団・副師団長負傷の件ですが、
 4名ともゾロディエールと名乗るエンディル側のリーダーから
 直接傷を受けていた模様です。」

エリーゼ 「尚、4名とも全治には半年程度かかる見込みです。」

ボイス 「そんなに状況は酷いのか?」

エリーゼ 「はい。外傷のみならず、
 中には複雑骨折等を負っている者もおります。
 リハビリ等の必要性を考慮しても、早急な戦線復帰は困難かと……。」

レナード 「欠員を補充するしかありませんね。」

ラグランジュ 「そう、それだ。
 負傷した司令官に代わり、前線で指揮をしていた
 大隊長っていうのは、結局誰だったんだ?」

エリーゼ 「大隊長のケイン=アークライトという人物と、
 同じく大隊長のユリア=ハーシェルという人物の両名が
 各々師団を臨時に指揮していたようです。」

ボイス 「ユリア!?なに、わしの孫か!
 うむ、うむ。流石はわしの血を引くだけある、よくやった!
 ……ところでわしのミルククッキーはどこやったかの?」

ウィルバー 「さっき自分でお菓子箱にしまっていたじゃねぇか。ほら、そこの。」

ボイス 「そうじゃったそうじゃった。
 いや、てっきり誰かがつまみ食いでもしたのかと思っての。
 失敬失敬。」

ウィルバー 「……なあ、本当にこのおっさんがこの国のお偉いさんなのか?」

レナード 「一応、な。
 厳密には、将軍職はウェルナー将軍以降20年近く空席のままだから
 ボイス副将軍が事実上の将軍と言ってもいいだろう。」

ラグランジュ 「損害状況は?」

エリーゼ 「では第一師団からご報告いたします…………。」


・・10分後・・


エリーゼ 「以上でバレンタイン港防衛戦に関する定例報告を終了します。」

ボイス 「うむ。」

エリーゼ 「ではこれで失礼いたします。」


がちゃっ



ばたん。


ウィルバー 「……あいつ、もしかして……。」


▽……。



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