Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(後編)』

『真実の継承者(後編)』




シルバニア王国
王城3階 廊下



白銀の都、シルバニア。
市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。

その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。


たったった


ウィルバー 「なぁ、ちょっと待って。」

エリーゼ 「はい?」

ウィルバー 「あのさ、前にどこかで会わなかったか?」

エリーゼ 「?」

ウィルバー 「俺に見覚えが……いや、あるわけないか。
 えっと、例えば俺の髪の色に……それも無理か。
 …………あー。」

エリーゼ 「???」

ウィルバー 「じゃあ、エーデルワイス。その名前に聞き覚えがないか?」

エリーゼ 「北方の山岳に咲く白い花ですよね? それが何か?」

ウィルバー 「……いや、それが君の……」

エリーゼ 「もしかして口説いているんですか?」

ウィルバー 「いや、そうじゃなくてだな……えっと、」

エリーゼ 「ふざけないでください!」

ウィルバー (……説明できないっ!
 ちっ。
 どうやって説明すればいいんだっ!?)

エリーゼ 「用事はそれだけですか?」

ウィルバー 「……えっと。」

エリーゼ 「でしたら仕事があるので失礼します。」

ウィルバー 「なぁ、本当に何か覚えはないか?」

エリーゼ 「だから何がですか?」

ウィルバー 「いや、その……。」

エリーゼ 「私は生まれてから一度も記憶を失ったりしていません!」

ウィルバー 「……生まれてから、か……。」

エリーゼ 「? とにかく、仕事があるので失礼します。」


すたすたすた。


ウィルバー 「…………まいったな。」

ウィルバー (そうか、普通そうだよな。
 生まれてくる前の記憶なんか持っていないのが普通なんだよな。
 ってことは、俺だけなのか例外は……。)

ウィルバー (あれから長い時の流れた今、
 昔の俺のことを知っているのはもう誰もいないんだ。
 ただ一人、奴を除いては……。)

ウィルバー 「変わっていないのは、天に煌めく星々だけ、か……。」


▽……。



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