『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 王城3階 廊下 白銀の都、シルバニア。 市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。 その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。 |
「なぁ、ちょっと待って。」
「はい?」
「あのさ、前にどこかで会わなかったか?」
「?」
「俺に見覚えが……いや、あるわけないか。
えっと、例えば俺の髪の色に……それも無理か。
…………あー。」
「???」
「じゃあ、エーデルワイス。その名前に聞き覚えがないか?」
「北方の山岳に咲く白い花ですよね? それが何か?」
「……いや、それが君の……」
「もしかして口説いているんですか?」
「いや、そうじゃなくてだな……えっと、」
「ふざけないでください!」
(……説明できないっ!
ちっ。
どうやって説明すればいいんだっ!?)
「用事はそれだけですか?」
「……えっと。」
「でしたら仕事があるので失礼します。」
「なぁ、本当に何か覚えはないか?」
「だから何がですか?」
「いや、その……。」
「私は生まれてから一度も記憶を失ったりしていません!」
「……生まれてから、か……。」
「? とにかく、仕事があるので失礼します。」
「…………まいったな。」
(そうか、普通そうだよな。
生まれてくる前の記憶なんか持っていないのが普通なんだよな。
ってことは、俺だけなのか例外は……。)
(あれから長い時の流れた今、
昔の俺のことを知っているのはもう誰もいないんだ。
ただ一人、奴を除いては……。)
「変わっていないのは、天に煌めく星々だけ、か……。」