『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 王城3階 廊下 白銀の都、シルバニア。 市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。 その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。 |
「おい、アシスト。
突然エリーゼの後を追っていったが、
何かあったのか?」
「いや、別に。」
「……なるほど。」
「なにが『なるほど』なんだ?」
「さては口説こうとしてふられたな。」
「……そういうわけじゃねぇんだが……」
「惚れたのか?エリーゼに?」
「いや、見覚えがあるんだ。
髪の色も瞳の色も違うけど、
あの雰囲気には覚えがあるんだ。」
「……いい口説き文句を考えたな。」
「そうじゃねぇって!」
「しかしエリーゼは、
いままでそういった経験がないらしいからな。
別の意味で手ごわいかもしれないぞ。」
「そうなのか?」
「私が調べた限りでは、な。ああ、どうやって調べたかは聞かないでくれ。
とにかく彼女はバレンタイン高等学院を首席で卒業したほどの才媛だ。
幼少の頃から文部両道一筋でやってきたようだ。」
「だから、あの若さで城壁守備隊長やってるのか。」
「前例のない若さだが、戦時ということもあって、な。
個人的にはそれでも役不足でもないかと思っているぐらいだがな。
……それで、どうやって口説くつもりだ?」
「いや、ちょっと待ってくれ。何か勘違いしてないか、レナード?」
「そうだな、例えば……『揺らしたいんだ、君の心を』とか
『君の瞳を俺に釘付けにしたいんだ』
案外こういった台詞に弱いタイプかもしれんな。」
「……言ってて恥ずかしくならないか?」
「別に。他にこういうのはどうだ?
『君だけの騎士になりたい』とか
『まるで君は野に咲く白百合のようだ』などというのは。」
「よくそれだけすらすらと口説き文句が出てくるよな。」
「まだストックはいくらでもあるぞ?」
「……なぁ、
ってことは作戦会議室にあった『女性の口説き方』って本、
あれおまえのだろ?」
「…………余計な詮索はしないことだ。」