『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 王城3階 作戦会議室 白銀の都、シルバニア。 市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。 その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。 |
「作戦会議室? ここに何があるというのだ?
……おい、アシスト。 ボイス副将軍がいないからといって、
その机の上のミルククッキーは食べない方がいいぞ。」
「え?……あ、ダメなのか?」
「命が惜しければ、の話だが。」
「わかった。2年ぐらいは心に留めておくよ。」
「やけに半端な年数だな。」
「それよりレナード、
俺が今から合図をする。
1、2、3で一緒に本棚の奥のスイッチを押してくれ。」
「スイッチ……ああ、この小さなでっぱりだな?」
「いくぞ、1、2、3!」
「……本棚の奥に……隠し通路だと?」
「これは、驚きだ。
どうやら建築当初から意図を持って
設計されていた様子だな。」
「もしかして、この部屋を守るために、その理由のために
作戦会議室がここに設置されたというのか?
強者の集まるこの部屋を関門とするために……?」
「はなまるぅ。」
「そうすれば外部からの侵入者に対して安全というわけか。」
「はなまるぅ、はなまるぅ。」
「いや、頭撫でられても困るんだが。」
「じゃあペンで描いて差し上げますわ、はなまるぅ。」
「遠慮しておく。」
「ペンがいやなのでしたらチョークでも構いませんわ。」
「もっと遠慮しておく。」
「それでアシスト君、君の祖先は一体何をここに隠したんだね?」
「これだ。この紙だ。」
「古びた一枚の紙切れ、たったこの一枚を?」
「ああ。 300年前の戦争の最中に隠された機密文書だ。」
「こんなものの為にわざわざ隠し部屋を一つ使って?」
「だがこれにはそれだけの価値がある。」
「価値 それはどういう意味だね、アシスト君?」
「この紙は人目に触れるよりも遙かに長い間眠り続けてきた。
今の魔導文明が興るよりも遙か昔に書かれ、
そのまま時の流れに忘れ去られようとしていた知識。」
「それでその紙はなんなんだ?」
「魔導、原本。」