『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 王城3階 作戦会議室 白銀の都、シルバニア。 市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。 その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。 |
「魔導原本? 伝説上の存在ではなかったのか?」
「確かに世間ではおとぎ話として知られていますが、
実際は現代にまで残っています。
それが何枚あるのか、正確にはわかっていませんが。」
「7枚。」
「え?」
「7枚だ。
恐らく現存するのは残り7枚だけ。
それも、ぎっしりと理論が書き込まれたものが。」
「そのうちの1枚が、アシスト君の持つ色あせた紙……?」
「ああ。」
「そしてもう1枚は少なくともありかがはっきりとしていました。」
「なにっ!?」
「時は大陸歴314年。
セリフォス共和国の総合図書館、つまりアシストさんの
実家から大量に本が移管されました。」
「……確かにじっちゃんがそんなことを言っていた記憶がある。
いまから10年程まえに、なんでもシルバニアの図書館を増設するとかで、
本を大量に提供したとか。」
「その書物の中に、1枚の紙切れが綴じ込まれていました。」
「! まさか。」
「その通りです。
魔導原本。
世間ではそう呼ばれる存在です。」
「じゃあ、そのもう1枚の魔導原本もこの国にあるのか!?」
「ええ、残っていました。今朝方までは。」
「!?」
「お気づきになられたようですね。はなまるぅ。
アシストさんがこの城に忍び込んだのと同時刻。
図書館に何者かが忍び込んだ事は今朝方お話ししましたよね。」
「まさか……そいつが……?」
「ええ。賊はどうやら、
アシストさんの祖先が隠した一枚を狙っていたようですが……
幸か不幸か、別のもう一枚がその手に渡ってしまったようです。」
「見当を付けた場所が間違っていたが、偶然そこにも類似品があったということか。」
「……それで、どうして魔導原本がセリフォスからこの国に?」
「多くの本と共に魔導原本に添えられていた手紙によれば、
たまたま当時の図書館の管理人が発見したらしく、
個人管理の危険性を感じ、この国へ管理を任せようとしたそうです。」
「結果的に2枚のうち1枚だけは残ったというわけか。」
(そういうことだったのか……。
……じっちゃんは知っていたんだ、
魔導原本が本当に存在することを。)
(だから300年前、
ウィリアムが大人になるのを待ってから旅に出した。
シェザにも眠っているであろう、残りの魔導原本を探しに。)
(だが、旅は途中で終わってしまった。
……いや、まだ終わっちゃいねぇ。
時は300年も経ったが、今の俺がその旅を引き継いでいる。)
「……強度の高い鎧を一つ貸してくれないか?」
「鎧? 私の前任者の鎧のスペアが一つあったはずだ。
師団長クラスの人間が身につける鎧は魔導金属リルでできているから
強度は保証する。だが、一体なにをする気だ?」
「この紙が、いつか切り札になった時のために。」