『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 城壁 魔導金属リルの白色をそのまま残した城壁。 王都全てを囲うこの高い壁は、人々の安心の拠り所となっていた。少なくとも大戦前までは。 しかし戦火が近づくにつれ、人々はこの城壁を見るたび不安を抱くようになっていた。 いままで実戦に一度も使われたことのないこの城壁の信頼性に……。 |
「早く城壁の中に入ってくださいっ!!!」
「!?」
「エリーゼ=ラントシュタイナー城壁守備隊長!」
「早く、もうエンディルが転移してくるのも時間の問題ですっ!」
「ああ!」
「アシストっ! 早く来いっ!!!」
「…………。」
「アシストっ!!!」
「俺が、くい止める。」
「なんだと?」
「ここは俺がくい止める。先に行っててくれ。」
「無茶を言うなっ!!!」
「アシスト君! 早く城壁の中に入りたまえ!」
「……ラグランジュ師団長代理。
時には、例え命を懸けてでも守らなくてはならないものもあるって
この間俺に言ったよな?」
「!」
「俺にとって今がその時なんだ。」
「!!」
「…………。
エリーゼ=ラントシュタイナー城壁守備隊長。
この城壁には奴らを一歩たりとも近づけさせねぇ。」
「ですが!」
「いいから! 俺の言うことを、聞いてくれ。」
「……しかし!」
「ラントシュタイナー君。彼の言うとおりにしてあげなさい。」
「ラグランジュ師団長代理……かしこまりました。」
「アシスト君……死ぬなよ。」
「ああ。
俺は、必ず生きて帰る。
……必ず!」
「アシストさん……。」