『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 シルバニアの森 王都の周囲に果てしなく広がる大森林。 この森は国名と同じく『シルバニア』の名を冠している。 もっとも国名が先か森の名が先か、その真実については伝承されていないが。 |
「仲間割れとは予想外だったな。
自分の仇、ねぇ。
……なるほどな、
お前はあの時の銀髪の生まれ変わりということか。」
「ああ。間に長い歳月を必要としてしまったけどな。」
「記憶の継承は意図的か偶然かは知らないが、
もしそれが意図的だとすれば、
この世界の人間は我々の予想以上に
魔導文明を発展させていることになるな。」
「?」
「俺は、
魔導に対し恨みを持っているゾロディエールとは違う。
俺だって本当はこんな戦いをしたくない。
だから極力無用な殺傷を避けている。」
「どういうことだ?」
「俺達の目的は魔導文明を崩壊させること。
目的はそれだけだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
そしてこの世界の人間に対しての恨みはない。」
「ゼルイリアス、どうしてそこまで魔導の放棄にこだわる?」
「おそらく、
この世界の文明レベルでは既に認知していると思うが
魔導とて物理法則の一種。
そのエネルギーは無尽蔵に得られる物ではない。」
「ああ。確かにいま一般に使われている魔導は月の光……魔力を
人間が体内に持つ理力で変換することにより魔導を生み出している。
だがそれは月が存在し続ける間は問題ないんじゃないのか?」
「……そこまで理論で解明しているのであれば話は早い。
確かに太陽の光は月で反射することにより魔力を生む。
だが、月で魔力が生成されるとき、
それは同時に月を蝕んでいる。」
「!?」
「この世界とてこのまま魔導を使い続ければ、
いずれ月は壊れる。
それを阻止する為に、そのような悲劇を起こさぬ為に
魔導をこの世界から無くしたい。」
「……ゼルイリアス。
確かにお前らの話が本当だとすれば、
魔導とは諸刃の剣なのかもしれない。」
「現に、俺のかつていた世界は魔導で滅びた。」
「……だからそれを繰り返さないために、
他の世界に侵入して魔導文明を
消して回っている、そう言いたいのか。」
「そうだ。
2度の悲劇は必要ない。
それ故に我らは魔導を捨て、
理力そのもので戦う方法を手に入れた。」
「……だけど、俺達は今更この文明を放棄することはできない。
誰だって今の生活水準を無くしたくはない。
それにこの世界は……」
「この世界は?」
「かつて、魔導が存在しなかった故に文明が滅びていることがある。」
「!!!」
「……その荒廃した社会を救ったのが魔導という永く消失していた技術。
再興した魔導技術によりここまで生活水準を戻すことが出来た。
それが、俺らが魔導を捨てられない理由だ。」
「……わかった。
やはり話は平行線のようだな。
だが俺は俺のやり方を、我らが王バルセザリアールのやり方を信じる。
あとは力で解決するしかないということか。」
「……みてぇだな。」