『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 シルバニアの森 王都の周囲に果てしなく広がる大森林。 この森は国名と同じく『シルバニア』の名を冠している。 もっとも国名が先か森の名が先か、その真実については伝承されていないが。 |
「消えた……これで、全てが終わったのか?」
「……シャラン・リィ・エリウクセス
さやかなる輝きよ、散れ!
シャイニングダスト!!!」
「なっ!?」
「ぐあぁぁあっ!?」
「ふっ。油断したな。」
「なっ……セディ……てめぇ……。」
「ふっ。
私の代わりにあの青い民を追い返してくれたことに感謝しよう。
礼といってはなんだが、楽にしてやろう。貴様の死を以てな。」
「……悪ぃな、それは俺の言葉だ。
確かにこの世界に文明を運んだのはてめぇかもしれない。
けど、そのために邪魔者を殺していいってわけじゃねぇだろ?」
「ふっ……私を倒す気か?」
「やってみるさ。」
「ふっ。その傷だらけの体で戦って勝てると思うのか?」
「『不可能でなければ試す価値はある』
300年前、その言葉を俺に教えてくれたのは、
どこの誰だったかな?」
「!!!
ふっ。あれは我が師の友人の口癖だ。
だがまぁいい。どっちが本当に強いか思い知らせてやる。」
「そうやっててめぇはいつも歴史の裏から操ってきた。
ラファエル王国の建国者とされているラファエルの驚異的な長寿を隠れ蓑とし、
周囲には自らの長寿に不思議に思わせず、実権を握り国家を支配し続けた。」
「…………待て。
何故貴様が旧文明時代のことを知っている!?
どこで真の歴史を知ったというのだ!?」
「セリフォス総合図書館地下三階、
そこの書架に面白い本がずらりと並んでいてな。
それも、今から1000年以上昔の本が。」
「……ふっ。ラファエル王国崩壊の時、
貴様の祖先に本の保護を頼んだのは迂闊だったな。
まさか子孫にその知識を奪われるとはな。」
「俺もあの封印の扉を開けるまで気が付かなかったよ。
大陸歴以前の書物が一切見つかっていないのは存在しないからではなく、
全てうちの図書館の地下に眠っていただけだなんて簡単な事実にな。」
「……知りすぎた者め。
この大陸で真実を知る者は私一人で充分なのだ。
二人はいらない。」
サイレント・ワールド
「この福音なき世界、この大陸だけが人類最後の砦と
なってしまった以上は尚更のこと
我が理想郷を潰えさせるわけにはいかないっ!」
「……その為に、魔導原本を探しているってのかよ。
他人の目に触れぬように、
そしててめぇだけがその知識を吸収できるように。」
「ふっ。名答だ。ならば一つだけ選ばせてやろう。
先に大人しくノートの破片を渡し痛みなく死を迎えるか、
あくまで抵抗して傷ついたあげく死を迎えるか。」
「…………わかったよ。」
「ほぅ?」
「セディ…いや、エルネスト。てめえが探しているのはこれだったな?」