『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 シルバニアの森 王都の周囲に果てしなく広がる大森林。 この森は国名と同じく『シルバニア』の名を冠している。 もっとも国名が先か森の名が先か、その真実については伝承されていないが。 |
「エルネスト。てめえが探しているのはこれだったな?」
「!? その紙切れは……!!!」
「『魔導原本』。
伝説ではそう呼ばれている古の魔術書。
そう、魔導原理を物理法則で解明した世界最初の研究ノート。」
「渡せ、その紙を!」
「……欲しけりゃやるよ。ほらよ。」
「!!! 風に流されるっ!?」
「ふっ!
手に入れたぞっ! ついに手に入れたぞっ!
ようやくこれで7枚全てが私の手の中にっ……!!!」
「……しっかりと、その手を離すなよ。」
「ふっ。貴様に言われなくとも!!!」
「ああ、絶対に離すなよ。
両手を空けて魔導防御が出来ないように、な!
……アウ・クレイスト・リ・ハリアス」
「!! まさか貴様、その魔導はっ!!!」
「そうだ。
300年前、てめぇが俺を殺したのと同じ魔導だっ!
……儚き肉塊よ砂塵へ帰れ!」
「やめろっ!!!」
「ディスインテグレート!」
「貴様ぁぁぁぁっ!!!」
「消えろ。魔導原本ごと、な。」
「紙が……体が……透けて行く……。
このノートは我が師から……私に継承されるべきもの……。
……セドリック……先生の……」
「ノートが……砂塵に……私はまだ……理想郷を…………」
「……ノ……エ……ル…………」
「俺だけじゃない。
今までその理想郷のために殺された人々の仇だ。
だから眠ってくれ、安らかに。」