『真実の継承者(後編)』
シルバニア王国 王城3階 作戦会議室 白銀の都、シルバニア。 市街を取り囲む城壁がその色の輝きを持つ事から、こう呼ばれる。 その扇形の中心部には、同じく白銀に染められた王城がそびえている。 |
「え?軍を辞めるって……退役するのか?」
「アシスト君、言ってあったよね?
俺は臨時師団長だと。
だから戦が終わった今、俺の役目も同時に終わった。」
「……じゃあこの後、どうするんだ?」
「どうしようかねぇ。
ま、しばらくは家族と一緒に過ごす事にするよ。
家には愛しい妻と二人の娘がいることだし。」
「娘というのが二人とも花の名前を持っていてね。
まぁ昔からうちの家に代々伝わる慣習っていうのもあるんだが、
二人とも花の名前とはあまり似つかぬ性格で……。」
「いや、家族の話は後で聞かせて貰うとして、第5師団のことだ。
誰が師団長に就任するんだ?
ただでさえ人材不足なんだろ?」
「英雄がいるじゃないか、この街を影から守った若者が。」
「…………は?」
「ウィルバー=ロウクス=アシスト師団長。あとは任せたぞ。」
「……ち、ちょっと待ってくれよ、
俺はいままで軍隊に所属したことも指揮したこともないんだぜ?
それなのにどうやって……。」
「一般市民は知らなくとも王立軍の上層部や一部の兵士は
君が英雄だということを知っている。きっと皆受け入れてくれるはずだ。
あとは順番に教わっていけばいい。君ならできる。」
「……俺が、師団長?」
「後は任せたよ、アシスト君。
それに君には心奪われた女性がいるんじゃないのかね?
誰とは、言わないが。ま、がんばれよ。」
すたすたすた
(……そうだ、これで終わりじゃない。 ここからが始まりだ。
彼女の記憶を取り戻す為の、本当の戦いはここからだ。
その為には記憶想起の魔導を発明する必要があるか……。)
(いきなりぶっつけ本番で魔導を試すわけにもいかないし。
とすると、その為には実験台が必要だな……)
「………………よし。」