Forbidden Palace Library #02 前例なき犯罪


王都シルバニア
中央公園

冬の冷たい風が、池に大きくゆるやかな波紋を描く。小さな円はゆっくりと広がるが、やがて石垣に至り消えていく。
水際にちょこんと鎮座する黒い猫が、次々と生まれるその紋様を不思議そうに眺めている。

散歩をしている市民とは何度か擦れ違ったが、特に挙動不審な人物は見あたらない。


アーク 「おや、君は確かボイス将軍の……」

「秘書です。」

アーク 「……先に言われちゃった。ちょっと僕残念だな。」

「アークライト師団長。ひょっとして、また道に迷っているんですか?」

アーク 「うん。実はそうなんだ。よく分かったねぇ。」

「まぁなんとなく、そんな気が……。
 あ、そういえば、師団長。
 ここに来るまでに、変な人は見掛けませんでした?」

アーク 「変な人?うーん……。
 そういえば灰色のマントを着た人物が、向こうでゴミ箱のぞき込んでたなぁ。
 すぐに何処か行っちゃったけど。」

「向こう?
 ……この付近にゴミ箱はないですよね。
 念のためお訊ねしますが、先程までどこにおられました?」

アーク 「え?
 ……そういや、なんで僕ここにいるんだろう。
 さっきまで工事現場で遭難していたはずだったんだけどなぁ。」

「どうやったら工事現場で遭難なんか出来るんですか?」

アーク 「さぁ。それが僕にもさっぱり。」

「……聞いた私がいけなかったみたいですね。」

アーク 「それで用件はおしまいかな?
 じゃあ僕は用事が有るからこれで。
 またね。」

「ってアークライト師団長っ!
 なんでわざわざ藪の中に入って行くんですかぁぁぁっ!?
 ……あーあ、行っちゃった。」

▽このまま中央公園にいる
▽城壁へ行く
▽住宅街へ行く
▽パン屋さんへ行く



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