Forbidden Palace Library #02 前例なき犯罪


王都シルバニア
住宅街

家々に明かりが灯され、煙突からは仄かにくすんだ色合いのゆらめきが立ち上る。

包丁で何かを刻む音、鍋で何かを煮込む音、そして何かの焼ける音。
それら調理される食材の音が、不調和なオーケストラとなって路地裏に響き渡る。


ユリア 「どう?怪しい人はみつかった?」

「さぁ。それが僕にもさっぱり。」

ユリア 「……何それ、アークの真似?」

「まぁ一応。」

ユリア 「……あんまり似てないわよ。」

「しくしくしく。」

ユリア 「そうそう、知ってる?
 アークってねぇ、実は一カ所だけ迷わずに行ける場所があるのよ。
 どこだと思う?」

「え?うーん……自分の家、ですか?」

ユリア 「ぴんぽーん☆
 すっごーい、よくわかったわねぇ☆
 誰かから聞いたの?」

「いえ、そういうわけではないんですけど……。
 ただなんとなく。」
(っていうか流石に自分の家にぐらい帰れないと……ねぇ。)

ユリア 「でねでね、この間アークの家に遊びに行ったら彼どこにいたと思う?
 それが傑作なことに煙突の中にいたのよぉ☆
 勝手口に行こうとして煙突に迷い込むのってアークぐらいよねぇ。」

「はあ……。」

ユリア 「そういえばこのあいだエリーゼちゃんとウィルバーちゃんと一緒にお茶のみに行ったんだけどね、
 エリーゼちゃったら緊張しちゃってかわいいのぉ☆
 あれ、絶対ウィルバーちゃんに気があるのよねえ☆もう健気ねぇ☆」

「さいですか……。」

ユリア 「あ、そろそろ夕方になるからあたし帰るわね。
 あたし夜って大嫌いなの。だって暗いでしょ?
 そうよ、なんで夜なんかあるのよ。世の中昼だけでいいのよっ!」

「いや、私に言われても……。」

ユリア 「あ、本当に早くしないと日が暮れちゃう。じゃねえ☆」

(……しかし、本当によく喋る人だなぁ。)

▽中央公園へ行く
▽城壁へ行く
▽パン屋さんへ行く



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