Forbidden Palace Library #04 彷徨いし来客


王都シルバニア
城壁

町中から集められた雪の山に冬の低い日差しが反射して、白銀の城壁はいつもより目映く輝いて見える。
それは美しくもあり、また眩しくもあり、横を通る人々はみな目を細めている。


「そうだ、エリーゼ師団長。」

エリーゼ 「なぁに?」

「いえ、つまらない事で申し訳ないんですが、
 前からどうしても聞きたかった事があるんですよ。
 どうしてあんな人が城壁守備隊長なんかやっているんですか?」

エリーゼ 「コペルクニス君の事?」

「ええ。」

エリーゼ 「コペルニクス君……年上の人を君付けするのも変な感じよね。
 私もよく知らないんだけど、彼ね、
 大戦で暗躍していたひとりらしいの。」

「大戦で?
 暗躍ってことは……歴史の裏で動いていたと言うことですか?
 あの高枝切りバサミ片手に?」

エリーゼ 「そういうことになるわね。」

「……あのひとって、一体いくつなんですか?」

エリーゼ 「それがよくわからないのよ。
 外見上よりは年取っているらしいんだけど、
 どうみても30代後半には見えないわよねぇ……。」

「ええっ!?そんなに年とってるんですかぁぁっ!?」

エリーゼ 「そうよ。というよりも私たち今の師団長が若すぎるのよね。」

「それで、どうしてあんな人がいきなり城壁守備隊長に……?」

エリーゼ 「さすがにそこまで急じゃなかったわよ。
 大戦の手柄を認められて採用抜擢されたのは確かだけど。
 その頃はまだ私が城壁守備隊長で彼が副隊長だったの。」

「あ、そうだったんですか。ちょっと安心。」

エリーゼ 「……そうよね、私がロウクス君と出会ったのも城壁だったわね……」

「え?そうなんですか?」

エリーゼ 「え、ええ。
 ……大戦が終わってしばらくしてマルス前師団長が辞めることになって、
 それにともなって私が師団長に昇格したのよ。」

エリーゼ 「城壁守備隊長の経験者が将来師団長になるっていう慣習が
 昔からシルバニアにはあるのよ。
 もっとも、今いる師団長達は私を除いてみんなその例外だけどね。」

(……なんか今すごく恐ろしい事を聞いたような……)
「例外って……ああ、そういえば今の師団長達って、
 みんな先の大戦の英雄なんですよねぇ。」

エリーゼ 「そうよ。アークライト師団長とユリア師団長はその頃は部隊長だったし、
 ベル師団長はシルバニアに雇われた傭兵として活躍してたし、
 ロウクス君……いえ、アシスト師団長は……ただの旅人だったものね。」

「え?ベル師団長って傭兵だったんですか?」

エリーゼ 「あら?知らなかったの?」

「……だから雰囲気が他の師団長達とちょっと違うんですね。
 そうだ。
 この機会にもう一つ聞きたいことがあるんですけど……」

エリーゼ 「なぁに?」

「シルバニアの城壁の伝説ってありますよね?
 大戦中、このシルバニアに敵が攻めてきたときに、たった一人の魔導師が
 それをくい止めて、いっきに戦況が逆転したってという話なんですけど……」

エリーゼ 「ええ。それがどうかしたの?」

「結局、その魔導師って誰だったんですか?
 正体は今も謎に包まれたままって巷では噂されていますけど、
 当時、城壁守備隊長だったエリーゼ師団長は何か知っているんじゃないですか?」

エリーゼ 「……ないしょ。」

「……え?あ、ちょっと、エリーゼ師団長、置いていかないでくださいよぉっ!」


▽中央公園へ行く
▽繁華街へ行く
▽住宅街へ行く



▽書庫に戻る


OWNER
Copyright(c)1997-1998 FUBUKI KOGARASHI (木枯 吹雪) fubuki@kogarashi.jp 日本語でどうぞ。