「レナード師団長っ!」
「……ん?なんだ、秘書か。また何か用か?」
「いえ、何か用かじゃなくて……」
(レナード師団長、雪かきでお疲れよね……。
お風呂、湧かしておこうかしら。
『レナード師団長、お風呂湧かしておきましたのでよければどうぞ』なんて……)
「用がないなら帰ってくれ。」
「レナード師団長。
お気持ちは充分にわかりますが、
とりあえず今は職務を優先させてください。」
「そうですよ。レナード師団長がアリスさんの事を好……」
「言うなっ!
それ以上言うなっ!
言ったら容赦しないぞっ!」
「き、急にどうしたんですか?
レナード師団長!?
ってお願いですから突然剣を抜かないでくださいよっ!」
(『あの、お背中お洗いしましょうか?』『あ、ああ、頼む』
それで、レナード師団長の背中……背中……背中……きゃっ!
だ、だめよっ!まだ早すぎるわっ!ああ、でもっ……あ。)
「アリスさんに聞かれたらどうするっ!」
「聞かれたらって……あれ?ひょっとしてまだ……」
「言うなっ!それ以上言えば……!」
「レ、レナード師団長、め、目がマジですよぉぉぉぉっ!?」
「ってあら、アリスさん?……もしもし?」
「あ、は、はい?何でしょうか?」
「……あ、どうやら聞いていなかったみたいですよ。
ほら、レナード師団長。ね、ね?
あのー、ですから剣を収めてくれません?」
「……一安心だな。」
「あのー、何か?」
「あ、いや、気にしないでくれ。」
(……昔はこういう時に平気で『君の笑顔がいつも通りで安心したのさ』とか
言えたはずなのに……何故、今は言えぬ!?どうした、レナード……?)
「…………。」
「…………。」
「……エリーゼ師団長、とりあえず放っておいて先に行きません?」
「そうね。その方が効率よさそうね。行きましょ。」