「それにしてもレナード将軍、いいご身分ですよね。」
「何だ、秘書か。何のようだ?」
「……レナード……将軍?」
「あれ?聞いていないんですか?レナード師団長が今度将軍に昇格したという話……」
「……ぽん。おお、そうか。」
「そ、そうかって……ひょっとしてレナード将軍、忘れてませんでした?」
「いや、そんなことはないぞ。
無論、この国の全軍を率いる者として何よりもこの職務が重要なのだ。
市民の命がかかっているのだから、何よりも任務を優先させる必要がある。」
(将軍に昇格なさったのね……嬉しいはずなのに……何故か素直に喜べないわ。
……だって将軍になられたら……
ここに来る回数が少なくなってしまうかもしれない……そう考えると……。)
「アリスさんよりも任務が大事ですか?」
「いや、そんなことはないぞ。
無論、愛する者の事を思えば仕事など二の次だ。
任務などよりも、やはり愛する者と共に時を過ごした方が……」
「さっきと言ってること全然違いません?」
「気のせいだ。」
「……あれ?もしもーし、アリスさん?」
(でも……ここは素直に喜んであげるべきよね。
そうよ、好きな人の出世ですもの……少し、寂しいけど。
……はっ!)
「あ、はい?」
「……どうやら今の話、聞いていなかったようですね。」
「あの、レナード将軍、おめでとうございます。」
「ありがとう。
そう言って貰えると嬉しいよ。
……で、秘書、俺がいい身分とはどういうことだ?」
「私が大変な目に遭っているのにレナード将軍は紅茶を飲んでのんびり……」
「大変な目?なんだ、それは?」
「あっ!そうだっ!道草くってる場合じゃなかったっ!探さなきゃっ!」
「……忙しい奴だな、あいつも。」