「あ、あのー、レナードさん……」
「なんだね?」
「あの、そ、その、い、今つきあっている人とか、いるんですか?」
「……いや、いない。」
「そ、そうですか……」
(よかったわ……私にも……
まだチャンスがあるということよね……)
「だが、好きな人ならいる。」
(ええっ!?
そ、そんな……誰なの!?
レナードさんの好きな人って……)
「……どなた……なんでしょうか?」
「あ、ああ。その……アルファベットのA……」
(アルファベットのA……アシスト師団長っ!?それともアークライト師団長っ!?
ダメよ、そんなっ、男性同士なんて不潔よっ!
見たくないわっ、そんなのっ!……でもちょっとだけ……だ、だめよっ!)
「その……アルファベットのAで名前が始まる人だ。」
(繁華街のアンジェリカAngelica?それとも裏の通りのオーレリアAurelia?
いえ、もしかすると毛糸屋のアニーAnnieかもしれないわ……そんなっ……!
アニーなんかまだ8才よ?ひょっとしてレナードさんってそういう趣味……)
「……アリスさん?」
「レナードさん……そういう趣味だったんですか……?」
(そんな……幼女嗜好だったなんて……。
私も少し童顔かもしれないけど……私じゃだめなのかしら……?)
「物好きだ、と言いたいのかね?いや、だがそれでも私は……」
(君の事が好きなのだ。
あの日、公園で君のことを見かけたときからずっと……)
「いえ、そういう趣味の人も世の中にはいるんでしょうけど……」
(でも……それでもいいの。それでも私の気持ちは……変わらないわ。
たとえ片思いでも……私は自分の気持ちに嘘はつけないから……)
「……あのー、なにか話が噛み合っているようで
いまいち噛み合っていない気がするんですけど……
気のせいですかねぇ?」
「ひ、秘書っ!いつからそこにいたっ!」
「いえ、先ほどからずっとここにいましたけど……。」
「……よくも私の計画の邪魔をしおって。
仕方有るまい。
計画は練り直しだ。」
「はい?計画?」
「い、いや、なんでもないこっちの話だ。
ところで秘書、
先ほど聞き忘れたのだが、大変なこととは一体なんなのだ?」
「あっ!そうだっ!書類探さなきゃっ!じゃ、失礼しますっ!」
「……忙しいやつだな、相変わらず。」
「あ、あの、レナード将軍、新しい紅茶いかがです?」
(でも、それでもいいの。
私は貴方がこうやって一日に一回来てくれるだけでも幸せなの……)
「ああ、ありがとう、貰うとするか。」
(しかしとんだ邪魔が入ったな……。
計画は再検討し後日改めて実行に移す必要があるか……)