Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
アークライト邸

城壁の側、比較的分かりやすい区画に建っているアークライト邸。
大通りから家の玄関まで、綺麗に一直線の歩道が続いている。 にもかかわらずほとんどの足跡はその歩道に跡を残さず、むしろ庭の中のあちこちに残っている。

余談になるが、隣の家の表札にもアークライトと書かれている。
アークライト師団長の祖父や親が住む実家である。


レナード 「アークは……どうやらいないようだな。」

「え?どうしてそんなことわかるんです?」

レナード 「気配だ。家の中から人の気配がしない。」

「それだけでわかっちゃうんですか?」

レナード 「ある程度はな。」

「ってことは、かつて諜報部に所属していたっていう噂は……もしかして本当に?」

レナード 「……どこでそんな話を?」

「いえ、
 だいぶ前になるんですけど、
 アシスト師団長がそんなことを言っていた気が……。」

レナード 「……アシストめ、余計なことを。
 いいか、秘書。知らない方がいいことというのも時にはある。
 それが他人の行動に関わることなら尚更だ。」

「じゃあ封筒の中身を見た犯人も謎のままでいいですよね、別に。」

レナード 「何を言うか。真実とは常に追求するためにある。
 偽りや誤魔化しなどというのは人を欺く事に他ならない。
 後にわだかまりを残したくなくば嘘はつかないことだ。」

「なんかさっきと言ってること違いません?」

レナード 「気のせいだ。」

「…………。」



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