Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
アシスト邸

王城から近い住宅街の一等地に存在するアシスト邸。
華やかさはなく、むしろ質素という言葉が似合う。

飾り気のない外壁は以前の持ち主の趣味なのか、それとも彼がそれを選んだのか。
どちらにせよ、機能美という言葉が相応しい。


レナード 「待てっ!」

アシスト 「げっ!先回りされたっ!」

すらりっ

レナード 「観念しろ、アシスト!」

アシスト 「ちっ。
 この至近距離でフェンシング使いのレナードに勝てる自信は
 ねぇしな……。」

レナード 「ならば白状しろ。
 作戦会議室の私の机の上にあった白い封筒を盗んだのは
 お前か?」

アシスト 「……あ?なんだそれ?」

レナード 「とぼけても無駄だ。」

アシスト 「だから何がだよ???」


・・・五分後・・・


アシスト 「ああ、いや、てっきり何か別のことがばれたのかと思ってな。」

「……別のこと、ってなんですか?
 なんかその言い方だと、
 他にも余罪がありそうなんですが……」

アシスト 「とにかく、それは俺じゃないぞ。その時間は確か……」

「確か?」

アシスト 「ベルをからかって遊んでた。」

「……はい?」

アシスト 「いや、なに。昨日の作戦会議中に
 奴の背中に『馬鹿げのグリフィスと呼んでください』って紙張ったのがバレて
 ちょっと逃げ回っていただけなんだがな。」

「……そんなことしたんですか?」

アシスト 「ああ。暇だったからな。」

「……暇、だった?
 あのー、ひょっとして私が一生懸命に報告書を読み上げている間、
 そんなことしていたんですか?」

アシスト 「……いい天気だな、秘書。」

「話を逸らさないでくださいっ!!!
 念のために確認しますが、昨日の午後5時頃、
 アシスト師団長はベル師団長と共に作戦会議室にいたんですね?」

アシスト 「ああ。それがどうかしたのか?」

「その時、封筒を見かけませんでしたか?」

アシスト 「封筒?」

「ええ。白い封筒なんですが。」

アシスト 「白い封筒……。
 ……見たような見ていないような……。
 それ、どこに置いてあったんだ?」

「恐らくレナード将軍の机の上かと。」

アシスト 「……言われればあったような記憶があるな。
 書類の束の一番上に置いてあったやつか?
 たしかベルから逃げているときにひっかけて落とした記憶が……」

レナード 「……アシスト。
 今ゆゆしきことを口にしたな?
 ひっかけて落とした、だと?」

アシスト 「ああ、マントの裾にひっかかっちまって。
 そう、それで作戦会議室から逃げるとほぼ入れ替わりに
 エリーゼとすれ違って……それっきり王城には戻ってないな。」

「そのまま封筒を置き去りにした後はどこに行かれたんです?」

アシスト 「……エリーゼに聞いてくれ。じゃ、俺はこれで寝ていいか?」

レナード 「アシスト。
 まだお前のアリバイが取れた訳じゃない。
 しばらく行動を共にしてもらおう。」

アシスト 「だから今回は俺じゃねぇってば。」

「……今回、『は』!?」

アシスト 「ああ、いやいや。
 いちいち細かいことにこだわってちゃ
 人生長生きできないぞ。」

「…………そういう問題なんですか?」

レナード 「ひとまず、
 アシストの証言通り入れ替わりにエリーゼが入ったとするなら、
 彼女のアリバイを取りに行くべきだな。」

「そうですね。
 というわけでアシスト師団長、
 案内していただけます?」

アシスト 「なんで俺なんだよ……ぶつぶつ。」



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