「待てっ!」
「げっ!先回りされたっ!」
「観念しろ、アシスト!」
「ちっ。
この至近距離でフェンシング使いのレナードに勝てる自信は
ねぇしな……。」
「ならば白状しろ。
作戦会議室の私の机の上にあった白い封筒を盗んだのは
お前か?」
「……あ?なんだそれ?」
「とぼけても無駄だ。」
「だから何がだよ???」
「ああ、いや、てっきり何か別のことがばれたのかと思ってな。」
「……別のこと、ってなんですか?
なんかその言い方だと、
他にも余罪がありそうなんですが……」
「とにかく、それは俺じゃないぞ。その時間は確か……」
「確か?」
「ベルをからかって遊んでた。」
「……はい?」
「いや、なに。昨日の作戦会議中に
奴の背中に『馬鹿げのグリフィスと呼んでください』って紙張ったのがバレて
ちょっと逃げ回っていただけなんだがな。」
「……そんなことしたんですか?」
「ああ。暇だったからな。」
「……暇、だった?
あのー、ひょっとして私が一生懸命に報告書を読み上げている間、
そんなことしていたんですか?」
「……いい天気だな、秘書。」
「話を逸らさないでくださいっ!!!
念のために確認しますが、昨日の午後5時頃、
アシスト師団長はベル師団長と共に作戦会議室にいたんですね?」
「ああ。それがどうかしたのか?」
「その時、封筒を見かけませんでしたか?」
「封筒?」
「ええ。白い封筒なんですが。」
「白い封筒……。
……見たような見ていないような……。
それ、どこに置いてあったんだ?」
「恐らくレナード将軍の机の上かと。」
「……言われればあったような記憶があるな。
書類の束の一番上に置いてあったやつか?
たしかベルから逃げているときにひっかけて落とした記憶が……」
「……アシスト。
今ゆゆしきことを口にしたな?
ひっかけて落とした、だと?」
「ああ、マントの裾にひっかかっちまって。
そう、それで作戦会議室から逃げるとほぼ入れ替わりに
エリーゼとすれ違って……それっきり王城には戻ってないな。」
「そのまま封筒を置き去りにした後はどこに行かれたんです?」
「……エリーゼに聞いてくれ。じゃ、俺はこれで寝ていいか?」
「アシスト。
まだお前のアリバイが取れた訳じゃない。
しばらく行動を共にしてもらおう。」
「だから今回は俺じゃねぇってば。」
「……今回、『は』!?」
「ああ、いやいや。
いちいち細かいことにこだわってちゃ
人生長生きできないぞ。」
「…………そういう問題なんですか?」
「ひとまず、
アシストの証言通り入れ替わりにエリーゼが入ったとするなら、
彼女のアリバイを取りに行くべきだな。」
「そうですね。
というわけでアシスト師団長、
案内していただけます?」
「なんで俺なんだよ……ぶつぶつ。」
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