「……確かアシスト師団長って、
魔導だけじゃなくて大陸の歴史にも
ある程度精通しているんですよね?」
「あ、ああ?突然どうしたんだ?」
「いえ、初等学校で歴史習ったときからずっと
気になっていたんですけど、
どうして魔導文明が興る前の歴史が消失しているんですか?」
「何者かが、歴史の全てを抹殺したと言ったら信じるか?」
「歴史の……抹殺?そんなことできるんですか?」
「俺も信じがたいが、現実に起こってしまっている。」
「そういえば昔の文明の遺跡ってほとんどないですよね。
数年に一度ぐらい発見されたっていう噂が立つことありますけど、
すぐにどこかに消えてしまいますよね。」
「消えたんじゃない。発見されるたびに消されてきたんだ。」
「消されてきた?」
「ああ。古の遺物が流出することを畏れた者が、
片っ端から消していった。発見される度に。
発見者、つまりは過去の知識を身につけた人物ごと、な。」
「その手を逃れ、わずかに過去から流出した文献も、
ほとんどは今となっては読めない形で記録されている。
歴史断片の多くは紙ではなく、光に記録されているからな。」
「光に記録、ですか?」
「ああ。詳しい意味は俺にもよくわからない。
だから旧文明時代のある時期を境に歴史が光に記録され初めてから
滅びるまでの1000年近くの歴史が空白のままというわけだ。」
「……あれ?待ってくださいよ。
ということは旧文明時代でも、
光に記録され出す以前の歴史は……」
「察しがいいな、秘書。
そう。残っている。
公にはされていないがな。」
「ええっ!?そ、そうなんですかっ!?」
「ああ。
俺も実家で、セリフォス総合図書館の地下書庫で
見たことがある。」
「だが残念なことに、
紙に膨大な記録がなされるようになってから、
光に記録媒体が移されるまで、わずか100年しかない。」
「つまり、その100年の記録だけが主に残っていると?」
「そういうことだ。
少なくとも、今の俺達に読める手段としては、な。
それを元に魔導という要素を追加し、この文明は作られた。」
「え?どういうことです?文明が作られた、って
……文明って自然発生するものじゃないんですか?
何か意図的に作られたっていうことなんですか?」
「一言で言えば、そうなるな。」
「もしその話が本当だとするならば……
誰が、何のために?
それに、作った人はどうなったんです?」
「……そこから先は知りたければ自分で調べるんだ。
俺が言うべき事じゃない。
これだけヒントがあれば、調べることもできるだろうしな。」
「え、あ、ちょっと、そこまで言っておいてずるいですよっ!」
★★