Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
アシスト邸

王城から近い住宅街の一等地に存在するアシスト邸。
華やかさはなく、むしろ質素という言葉が似合う。

飾り気のない外壁は以前の持ち主の趣味なのか、それとも彼がそれを選んだのか。
どちらにせよ、機能美という言葉が相応しい。


「……確かアシスト師団長って、
 魔導だけじゃなくて大陸の歴史にも
 ある程度精通しているんですよね?」

アシスト 「あ、ああ?突然どうしたんだ?」

「いえ、初等学校で歴史習ったときからずっと
 気になっていたんですけど、
 どうして魔導文明が興る前の歴史が消失しているんですか?」

アシスト 「何者かが、歴史の全てを抹殺したと言ったら信じるか?」

「歴史の……抹殺?そんなことできるんですか?」

アシスト 「俺も信じがたいが、現実に起こってしまっている。」

「そういえば昔の文明の遺跡ってほとんどないですよね。
 数年に一度ぐらい発見されたっていう噂が立つことありますけど、
 すぐにどこかに消えてしまいますよね。」

アシスト 「消えたんじゃない。発見されるたびに消されてきたんだ。」

「消されてきた?」

アシスト 「ああ。古の遺物が流出することを畏れた者が、
 片っ端から消していった。発見される度に。
 発見者、つまりは過去の知識を身につけた人物ごと、な。」

アシスト 「その手を逃れ、わずかに過去から流出した文献も、
 ほとんどは今となっては読めない形で記録されている。
 歴史断片の多くは紙ではなく、光に記録されているからな。」

「光に記録、ですか?」

アシスト 「ああ。詳しい意味は俺にもよくわからない。
 だから旧文明時代のある時期を境に歴史が光に記録され初めてから
 滅びるまでの1000年近くの歴史が空白のままというわけだ。」

「……あれ?待ってくださいよ。
 ということは旧文明時代でも、
 光に記録され出す以前の歴史は……」

アシスト 「察しがいいな、秘書。
 そう。残っている。
 公にはされていないがな。」

「ええっ!?そ、そうなんですかっ!?」

アシスト 「ああ。
 俺も実家で、セリフォス総合図書館の地下書庫で
 見たことがある。」

アシスト 「だが残念なことに、
 紙に膨大な記録がなされるようになってから、
 光に記録媒体が移されるまで、わずか100年しかない。」

「つまり、その100年の記録だけが主に残っていると?」

アシスト 「そういうことだ。
 少なくとも、今の俺達に読める手段としては、な。
 それを元に魔導という要素を追加し、この文明は作られた。」

「え?どういうことです?文明が作られた、って
 ……文明って自然発生するものじゃないんですか?
 何か意図的に作られたっていうことなんですか?」

アシスト 「一言で言えば、そうなるな。」

「もしその話が本当だとするならば……
 誰が、何のために?
 それに、作った人はどうなったんです?」

アシスト 「……そこから先は知りたければ自分で調べるんだ。
 俺が言うべき事じゃない。
 これだけヒントがあれば、調べることもできるだろうしな。」


すたすたすた。


「え、あ、ちょっと、そこまで言っておいてずるいですよっ!」



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▽ラントシュタイナー邸へ行く
▽パン屋ソフトブレットへ行く

★★



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