Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
ハーシェル邸

城壁の側、最も明るい区画に建てられたハーシェル邸。
シルバニアの建築法に合わせて塗られた白い家屋は、城壁の上から発せられる魔導の明かりを反射しややまぶしくも感じる。特にこんな真夜中であれば尚の事だ。

それにも関わらず家の中の至る所から、丁寧にも窓という窓の全てから室内の明かりがこぼれてきている。
家の主が寝ていようが寝ていまいが、常にこの家には明かりが灯っていることで有名なのである。


ユリア 「あっれーっ?
 秘書ちゃんおっはよー☆
 こんな朝早くから何やってるのー?」

「あ、ユリア師団長。
 いえ、実はですね、レナード将軍の命令で……
 あ、そっか。ユリア師団長にも聞いておかないと。」

ユリア 「え?なになに?
 あたしまた容疑者になっちゃったの?
 きゃー☆大変、どうしましょー☆」

「……えっと、つかぬことをお伺いしますが、
 昨日の午後の定例会議の後、午後6時から7時の間に
 もう一度会議室に立ち寄ったとかそういうことはありません?」

ユリア 「あらぁ☆ どうして知ってるのぉっ☆
 ひょっとして秘書ちゃんあたしのストーカー?
 きゃー、おそわれちゃうー☆」

「……あのー、人の話聞いてます?」

ユリア 「アークよりはちゃんと聞いている自信あるわよ☆」

(そんな自信持たれても困るんだけどなぁ……)

ユリア 「それで、作戦会議室がどうしたの?
 また誰かおじーちゃんのミルククッキーでも食べたの?
 あたしはお兄ちゃんと違ってクッキーに興味ないしー☆」

「いえ、あの、
 そういう話ではなくてですね、
 ひょっとしたら会議室で一通の白い封筒見ていないかなぁと。」

ユリア 「白い封筒? あ、レナードちゃんのラブレターのことね☆」

「……は?」

ユリア 「え?だから、アリスちゃん宛に書かれたラブレターのことでしょ?
 もうレナードちゃんったら一途よねぇ☆ きゃあ☆
 でもあの書き方じゃ乙女心は掴めないわっ☆」

「あのー、ってことはひょっとして犯人ってユリア師団長……?」

ユリア 「だって封が綺麗に開いてたしー☆
 せっかくだからあたしがちゃんと書き直しておいてあげたのー☆
 もうこれでばっちりね☆きゃー☆」

「書き直しって……えっと、話を要約すると、
 レナード将軍の探してる白い封筒って言うのは実はラブレターで、
 その文面をユリア師団長が書き換えた、と?」

ユリア 「そうとも言うかもねー☆
 え?もしかしてあたし容疑者?
 ねぇねぇ、容疑者容疑者?」

「容疑者も何も犯人そのものだと思うんですけど……。
 それで、そのラブレターはどこに?
 まさかもうアリスさんに渡してしまったとか?」

ユリア 「書き直したラブレター?ここにあるわよ☆
 いまから届けに行こうと思ってー☆
 パン屋さんだからもうこの時間には起きているかなって☆」

レナード 「……ほぅ。
 話は全て聞かせてもらった。
 なるほど、そういうことか、ユリア。」

ユリア 「あら、レナードちゃん、おはよー☆」

レナード 「ユリア、犯人はやはり当初の予測通りお前だったか。」

「……最初はアシスト師団長を犯人だと決めつけていませんでした?」

レナード 「何か言ったか?」

「いえ、なんでもありません。」

レナード 「余計な手出しはしないでもらおう。
 ユリア、お前が書き直したという手紙ごと
 その白い封筒は返してもらうぞ。」

ユリア 「えー?
 恋の橋渡しぐらいしてあげるわよー☆
 ほら、遠慮しない遠慮しない☆」

レナード 「いいから渡したまえ。」

ユリア 「んもぅ、けちー☆ はい。」

レナード 「……よし。これで無事に回収できたというわけか。」

「……あれ?
 ということは……ユリア師団長、
 レナード将軍が書いた元の手紙はどうしたんです?」

ユリア 「作戦会議室の書類棚の一番上に置いてきたわよ☆」

アシスト 「……へぇ。何探しているのかと思えばラブレターだったのか。」

「あ、アシスト師団長。」

アシスト 「ユリア、元のラブレターは作戦会議室の書類棚の上なんだな?」

ユリア 「ぴんぽーん☆」

レナード 「アシスト、何を企んでいる?」

アシスト 「いや、俺が先に手に入れてアリスさんに渡したらどうなるかなと?
 ここからパン屋の前を経由すれば王城まではすぐだしな。
 ……じゃ、そゆことでっ!」



だっだっだっだっ

レナード 「あ、待て、アシスト!!!
 余計な奴に話を聞かれてしまったかっ!
 迂闊だったな……秘書、追いかけるぞっ!」

「あ、はいっ!」



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▽ラントシュタイナー邸へ行く
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