Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
中央公園

遊歩道の両側に植えられた落葉樹は、その梢から小さな葉を芽生えさせている。
その枝の上では小鳥がさえずり、木々が再び緑色を纏うのを心待ちにしているようだ。
周囲の景色が色を帯びてきたからであろうか、冬には冷たく感じられたその石畳もこの季節にはむしろ暖かく見えてしまう。

公園のベンチでは、猫がしっぽを揺らしながら居心地良さそうにひなたぼっこをしている。



「アシスト師団長って最近はどんな本をよく読むんです?」

アシスト 「そうだな、魔導飛翔力学の専門書だろ、
 それと流体魔導学の応用書に理力波動の解説書……。
 まぁ最近は読むより自分の研究をまとめることの方が多くなってきたかな。」

「まとめているんですか?」

アシスト 「ああ。
 暇を見つけては今までの研究成果を色々と
 ノートにまとめたりしているんだけどな。」

「例えばどんなことです?」

アシスト 「エリーゼに追われて重力系飛翔魔導で逃げている時の為に、
 新たに任意の空間に荷重力の一点を魔導で生み出し、
 そこを基準として加速効果を生みだし逃げ切る為の双曲線の方程式についてとか。」

「…………は?」

アシスト 「あとは人混みの中でベルだけをからかうために、
 音声を任意の一点に集中して送り届ける
 パラメトリックアレイ効果の研究とか……まぁいろいろだ。」

「……そういう知識をもっとまともな事に役立てればいいのに。」

アシスト 「何か言ったか、秘書?」

「いえ、なんでも。」

アシスト 「今、実験台になりたいとか言わなかったか?」

「やだなぁ、そんなこと言うわけないじゃないですかぁ。
 あ。そういえば用事を思い出したので失礼しますー。
 じゃ、私はこれでっ。」


たったった


アシスト 「……ちっ。逃げたか。」



▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く

★★



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