Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
城壁

日差しをうけて白く輝く城壁。
そしてその城壁の下、同じ白さで輝く高枝切りバサミ。
季節が移り変わってもこの二つだけは変わらないものなのだろうか。

ついこの間まで城壁の上に常備されていた雪かき用のスコップは、もう季節的に必要ないと判断されたのか、兵舎に戻されてしまったようだ。

先ほどまで馬車の上で交渉していた商人達の姿もまばらになってきた。
どうやら交渉がてら昼食でも取りに行ったのだろう。



(あれ?王城の方から歩いてくるのは……?)

ユカワ 「郵便の回収に来ました。」

コペルニクス 「ご苦労。ちゃきーん。」

「……ってあのー、どうして王城の兵士が郵便を回収に来るんです?」

ユカワ 「その方が面白いし。」

「ええっ!?」

ユカワ 「……だったらどうする?」

「ああ、びっくりしたー。」

コペルニクス 「ちゃきーん。
 好奇心旺盛なのはいいことだ。説明してやろう。
 それはだな、この俺様の華麗なる高枝切りバサミ……」

「いえ、高枝切りバサミじゃなくて郵便のことについて聞きたいんですが。」

コペルニクス 「…………。」

「いえ、ですから睨まれても。」

コペルニクス 「……この王都の場合、
 これから配達される郵便もどこかから配達されてきた郵便も
 一度は全て城壁に集まることになっている。」

「あ、そうなんですか?」

コペルニクス 「ここで地区ごとに分別され、各区域ごとに配達されていくことになるのだが、
 王城だけは例外だ。一般の郵便職員は立ち入りを禁じられているからな。
 そこで、ユカワの様に王城担当の兵士がまとめて受け取りに来るわけだ。」

「なるほど、そういう仕組みだったんですか。
 それで王城に運ばれた手紙が内部で各ポストに放り込まれると。
 ……結構面倒なシステムですね。」

コペルニクス 「国家機密を守るためだ。そのぐらい仕方はない、ちゃきーん。
 ところでここまで聞いたからには
 俺様の華麗なる高枝切りバサミについても説明を……。」


すたすたすた


コペルニクス 「おーい、無視するなぁ」



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