「いらっしゃいませ。」
「この店でクッキーは売っているか?」
「あのー、当店ではパンしか扱っていないのですが……申し訳ございません。」
「そうか。
それは仕方がないな。
別の店をまわると…………レナード?」
「……ん?ジュリアス?」
「お前、パン屋でなにやってんだ?」
「そういうお前こそ何買うつもりだったんだ?」
「え?
チョコチップクッキー売っていないかなぁと。
ほら、パン屋って時々そういう菓子を作っているところもあるだろ?」
「……いつから宗旨替えしたんだ?
昔はあれほどまでにボイス元帥と同じく
ミルククッキー好きだったろうが。」
「そういうお前こそ、昔は小さな女の子とよくデートしていたよな。」
「え?そ、そうなんですか、レナード将軍?」
「いやー、俺もあんときは驚いたぜ。
まさかレナードがウェルナー通りのアンジェリカちゃん(当時6歳)にまで
声をかけるとは。」
「……待て。誤解を受けそうな表現はやめろ。
ただ単に迷子になりそうだったから帰り道を教えていただけだ。
それと秘書、さりげなく遠ざかるのはやめろ。」
「あ、いえ、なんとなく。」
「そうそう、それより驚いたのが、
オーレリアちゃん(当時2歳)に熱い抱擁をした時だったかな。
こいつの守備範囲広いなぁと思ったもんなぁ……。」
「女の子が水たまりで転んで今にも泣きそうだったから、
抱き上げてよしよしとあやしていただけだ、妙な言い方をするな。
……だから秘書。遠ざかるなと言っている。」
「いえ、やっぱりなんとなく離れた方がいいかなーって。」
「……ジュリアス、頼む。
変なことを言うな。
部下に誤解を与えかねん。」
「いやー、昔の記憶がちょっと曖昧で。」
「……既にそういう次元の問題じゃない気がするんですが。」
「そうか?まぁいいよ。」
「いえ、よくないんですけど……。」
「ジュリアス。お前という奴は昔から…………」
「レナード、お前だって10年前は………………」
(あーあ、なんか当分終わりそうにない口論しているなぁ。
……ここにいてもうるさいだけだし、
ちょっと他の所を回ってこようっと。)
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