Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
繁華街

気候が涼しくなると共に人々の往来は活発になる。それはこのシルバニアとて例外ではない。
道のぬかるみがなくなり馬や馬車にとって最も移動しやすい季節となるこの涼季。
近隣の諸都市から農作物や工芸品が馬車いっぱいに詰められて運ばれて来るだけでなく、
北のエルメキアやアルゲンタインといった遠い地方からも昨年取れた産物が運ばれてくる。

商人にとって、冬が訪れる前の秋と同じぐらいこの涼気が商売上おいしい季節となるからである。


ユリア 「そうそう秘書ちゃん、聞きたい?」

「……はい? 何をです?」

ユリア 「アークの迷子話。」

「……まだあるんですか?」

ユリア 「だってそりゃアークだものー☆
 いくらでもあるわよー☆
 もう星の数ほど☆」

「いえ、確かにいくらでもありそうなんですけど……」

ユリア 「でね、でね、続きなんだけど、聞いて聞いて、秘書ちゃん。」

「はぁ……。」

ユリア 「切り株持ち歩いて失敗して、
 チーズ持ち歩いて失敗して、
 結局3度目の正直で持ち歩いたのが……」

「持ち歩いたのが?」

ユリア 「おっきなバームクーヘン。両腕に抱えて。」

「……は?」

ユリア 「バームクーヘンって『木のケーキ(Baum Kuchen)』って意味でしょー?
 だから年輪代わりになると思って持ち歩いたらしいのー☆
 おなか空いたら食べることもできて一石二鳥ってことで☆」

「……それって一石二鳥って言うんですか?」

ユリア 「でもね、致命的欠点があったの。」

「……なんとなく全てが最初から致命的欠点だらけな気もするんですけど。」

ユリア 「バームクーヘンってどこを切っても年輪が均一なのよねー☆」

「……あっ…………。」

ユリア 「それでアークったら、
 仕方なくその場で全部食べちゃったんだってー☆
 アークらしいわよねぇ☆」

「……やっぱりアークライト師団長って…………。」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 住宅街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く

★★



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