Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
住宅街
パン屋ソフトブレッド

木彫りの看板のぶら下がる住宅街のパン屋さん、ソフトブレッド。
近づくにつれ、だんだんと香ばしい匂いが漂ってくる。
どうやら先ほどパンが焼き上がったばかりのようだ。




からんからん


ジュリアス 「だからお前は昔から……」

レナード 「そういうジュリアスこそ小さい頃……」

「あ、まだ口論してる。」

アリス 「あの、レナード将軍にジュリアス様、
 口論なさっていないでとりあえずお茶でも飲まれては如何でしょうか?
 先ほど沸かし過ぎたお湯が丁度よくなった頃ですので。」


とくとくとくとく


ジュリアス 「……すまないね、アリスお嬢さん。」

レナード 「言っておくが、アリスさんに手を出したらただじゃおかないからな。」

ジュリアス 「しねぇよ、そんな命知らずなこと。」

アリス (えっ……。
 レナード将軍がそんなこと言ってくれるなんて、
 嬉しい……。)


とくとくとくとく


アリス (『君に触れていいのは俺だけだ』『レナード将軍……』
 『他の誰にも触らせない……』『あ、ダメ、そんなとこ……』
 『……いいだろ?』『んっ……。』)


どぼどぼどぼ


ジュリアス 「ってああっ!
 アリスお嬢さん、お茶お茶!
 こぼれてますっ!」

アリス 「え?あ、ああっ、ごめんなさいっ!」

レナード 「キ・エシェル・リア 水のかけらよ 凍れ アイス!」


パキーン


レナード 「これでよし。
 アリスさん、氷が溶けないうちに
 このこぼれた紅茶を流しに運んで下さい。」

アリス 「あ、はい。」


たったったっ


「……なるほど、氷の魔導ってそんな便利な使い方があったんですね。」

レナード 「こぼれた液体が拡散する前に凍らせてしまえば、
 少し薄いがなんとか手で持ち運べるようにはなるからな。
 とっさに拭く布がない時とかに役立つぞ。」

ジュリアス 「その魔法憶えたての頃って、よく水たまり凍らせて遊んだよなー。
 雨上がりの日に公園に出来た水たまりを片っ端から凍らせて、
 女の子転ばせて遊んだりとか。」

「……そんなことしてたんですか?」

レナード 「秘書、だからそこで逃げる体制に入るな。」

「いえ、やっぱりこの人の側にいるのは危険かなーと。」

レナード 「微妙に話が歪められている気がするが、ジュリアス。
 わざと転ばせたわけではなく、
 後を付いてきたユリアが勢い余って転んでいただけな気がするが。」

ジュリアス 「いやー、昔の記憶がちょっと曖昧で。」

「……だからそういう次元の問題じゃないと思うんですが……。」

ジュリアス 「一緒にアークも転んでいなかったっけ?」

レナード 「いや、それは明らかに記憶違いでアークは転んでいなかったはずだ。
 アークは氷の上で何故かぐるぐる何周もしていただけで、
 それ以外にはたいしたことなかったはずだ。」

「まぁなんとなくその場面、想像つきますけど、
 同じ氷の上を何周もする時点で充分に大した事だと思うんですが……。
 っていうかこの人たちって一体…………。」

ジュリアス 「そもそもあれはレナードが試し詠唱したいからと…………」

レナード 「いや、言い出したのはジュリアスが先に…………」

「あーあ、また口論に戻ってるし。」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く

★★



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