「ごめんなさいレナード将軍、
ボイルの魔導が効きすぎて、
ちょっとお茶が熱くなってしまいました……。」
「ああ、いや、構わない。ありがとう。」
(『お茶が冷めるまでの間君の顔を見ているから』『そんな……』
『見せてくれ、その愛しい顔を』『……恥ずかしいっ』
『君のことがもっと知りたい』『……ダメ………んっ。』)
「あ、い、いらっしゃいませ。」
「……やっぱりここにいたんですね、レナード将軍。」
「何の用だ、秘書。」
「いえ、ジュリアスさんのことでお話が……」
「待て、話はこの熱いお茶が丁度いい温度加減になってからだ。」
「……あのー、そんなに待っていられないんですけど。」
「お茶が熱いのは、お茶には不純物が多く含まれているからだ。
だから本来水が蒸発する100℃に達しても蒸発しない。
だから舌火傷の可能性が高くなるのだ。」
「いえ、誰もそんなこと聞いていないんですが……。」
「逆に氷に塩を入れると液体のまま0℃以下に温度を低下させることもできる。
塩が氷を溶かそうとし、そのときの融解熱をも奪うからだ。
初等学校の理科の授業で実験しなかったか?」
「だからそういう事が聞きたいわけではなくて……。」
「とにかく、話はこの紅茶が冷めてからだ。」
(…………この人は後回しにした方がよさそうだなぁ。)
★★★