Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
中央公園

遊歩道の両側に植えられた落葉樹は、その梢から小さな葉を芽生えさせている。
その枝の上では小鳥がさえずり、木々が再び緑色を纏うのを心待ちにしているようだ。
周囲の景色が色を帯びてきたからであろうか、冬には冷たく感じられたその石畳もこの季節にはむしろ暖かく見えてしまう。

公園のベンチでは、猫がしっぽを揺らしながら居心地良さそうにひなたぼっこをしている。



ユリア 「ねぇねぇ、秘書ちゃん。
 『二次遷都計画委員会』って聞いたことあるー?
 シルバニア建国当初に存在していた組織なんだけど☆」

「二次遷都計画委員会?」

ユリア 「今から500年近く昔、シルバニアが北のブランドブレイ王国から分離独立する時に、
 暫定的にバレンタイン港に首都を定めたんだけど(一次遷都)
 あくまでそれは正式な首都を定めるまでの臨時的なものでしかなかったの。」

「どうしてバレンタイン港をそのまま正式な首都にしなかったんです?」

ユリア 「開拓時代に人口の流入があったりしたせいで都市整備がぐちゃぐちゃになっちゃって、
 防衛的にかなり問題があったらしいの。
 ほら、2年前の大戦でもエンディル側に苦戦を強いられたしー。」

「なるほど、それできちんとした首都を探す必要があったわけですね。」

ユリア 「でも当時、国土の半分が開拓地だったシルバニアに
 そんな都合のいい都市なんかあるわけなくて、
 仕方なくてどこかに計画都市を作ろうということになったらしいの。」

ユリア 「そして選ばれたのが、ここシルバニア村。」

「え……?村、だったんですか?ここ?」

ユリア 「そうよー。村って言っても、
 開拓地へ赴く人々が一時的に滞在するだけの
 宿場村みたいなものだったらしいの。」

「……これだけ大きな都市になってしまうと、
 そのころの様子なんて
 全然想像つかないんですけど……。」

ユリア 「でねでね、場所は決まったからじゃあ実際にどんな首都を、
 そしてどんなお城を造るのか協議するための
 委員会がバレンタインの暫定首都に設立されたらしいのー☆」

「それが先ほど言っていた『二次遷都計画委員会』?」

ユリア 「ぴんぽーん。
 その委員会の人たちのお陰で今のシルバニアがあるのよ☆
 感謝しなくちゃね☆」

「その委員会の構成員って、どんな人達だったんでしょうね。」

ユリア 「意外と秘書ちゃんみたいな人もいたりしてー☆」

「……それ、あまり洒落になっていないような気がするんですが。」



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▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く

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