Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
住宅街
パン屋ソフトブレッド

木彫りの看板のぶら下がる住宅街のパン屋さん、ソフトブレッド。
近づくにつれ、だんだんと香ばしい匂いが漂ってくる。
どうやら先ほどパンが焼き上がったばかりのようだ。



「あのー、レナード将軍。
 さっきから聞こうと思っていたんですが、
 ジュリアスさん侵入阻止作戦はどうなったんでしょうか……?」

レナード 「そうだ、ジュリアス。
 言い忘れていた。
 ボイス元帥がお前の侵入を拒もうとしているぞ。」

「……レナード将軍、ひょっとして本気でそのこと忘れていましたね?」

レナード 「何の事かな?記憶にないな。」

ジュリアス 「なんでバレたんだ?」

レナード 「お前が俺宛に書いた手紙があっただろう。
 帰還の日時を書いた奴。
 あれが何故か手違いでボイス元帥のポストに放り込まれていたらしくてな。」

ジュリアス 「そこからバレたのか。
 にしてもあのジジイまだ怒ってるのか……。
 だからあれは俺の濡れ衣だって言ってるのにな。」

「あのー、何かあったんですか?」

ジュリアス 「あー。
 昔ちょっと、色々もめてな。
 しかしそいつは困ったな。」

レナード 「それで、どうするジュリアス。
 軍事作戦上ではお前はこの王都に
 入ってはいけないことになっているのだが。」

「……もしかして、
 師団長達が誰も止めようとしていないあたり
 最初から誰も実行する気のない作戦だったんじゃ。」

レナード 「だからといって命令は命令だ。元帥に逆らうわけにはいかない。」

「じゃあどうするんです?」

レナード 「とりあえず、最善は尽くしたということで。」

「いいんですか?そんないい加減で?」

レナード 「別に構わん。結果が伴わなかっただけと言うことにすればいい。」

ジュリアス 「ま、なにはともあれ。いつまでもここに長居しているわけにも行かないし、
 ちょっと俺は住宅街をうろついてみるか。
 他にクッキー屋がないか調べてみたいしな。」

レナード 「そうか。ではまた後でな。」

ジュリアス 「おうよ、レナード。」


からんからん


「こ、この二人ってよく分からない……。」



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