「………………。」
「どうした、秘書? なにか悩んでいるのか?」
「……アシスト師団長。
前から疑問だったんですけど、青き民エンディルって
どうしてこの世界に侵攻してきたんでしょうね。」
「奴らの言葉を借りるならば『魔導を滅ぼすため』とのことだけどな。
600年前に300年前、そして2年前の侵攻の時も最終的には俺達が勝利してはいるものの……
奴ら、また300年後に来るんだろうな。その頃には俺達はとっくに生きていないけどな。」
「いえ、そうではなくて……。」
「???」
「どうして同じ宇宙の別の惑星ではなく、
違う世界のこの星を侵攻してきたのかなぁと。
なんとなく昔から疑問だったんですよ。」
「なるほど、面白い疑問を持ったな。
……秘書、俺達の住んでいるこの星をエンディル側から見れば、
別の宇宙の別の地球ということになる。」
「別の宇宙の別の地球、ですか。」
「そして宇宙には星の数以上に惑星がある。
だが実際に生命体が存在するのはごくわずかとされている。
その中で文明を持った者となれば更に数は絞られることになる。」
「へぇ…………。」
「しかも星々の距離は気が遠くなるほど長い。
同一世界上に於ける空間転移理論が存在するとしても発見は確率的に困難だ。
とすれば、他の惑星の文明を探すのは無謀だ。」
「ほぉ…………。」
「恐らくエンディルはそこをついたんだろうな。
どの世界であっても地球という惑星が消滅でもしていない限り、
そこに人間が存在している可能性は高い。例え文明が異なっていても。」
「はぁ…………。」
「とすれば、違う宇宙軸にいる同じ地球を調べた方が効率はいい。
ほとんど、どの世界にも人間はいるわけだ。
その方がエンディルから見た我々のように、魔導文明を見つけやすい。」
「ふぅ…………。」
「多次元的に考えれば、世界と世界は離れているが同時に接してもいる。
つまり無限距離に存在しながらもゼロ距離にも存在しているということだ。
そこを利用してこちらへ攻めてきているのだろう。」
「ひぃ…………。」
「どうして奴らがあれほどまでに魔導を目の敵にしているのかは
未だによくわからないままだけれどもな。
ま、そういうことだ。……分かったか?」
「……なんとなく概念的なことだけは…………はふぅ。」
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