Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
城壁

日差しをうけて白く輝く城壁。
そしてその城壁の下、同じ白さで輝く高枝切りバサミ。
季節が移り変わってもこの二つだけは変わらないものなのだろうか。

ついこの間まで城壁の上に常備されていた雪かき用のスコップは、もう季節的に必要ないと判断されたのか、兵舎に戻されてしまったようだ。

城壁の側に設けられた馬車駅では、馬車の上の商人達と地元の商売人がああだこうだと大きな声を出しながら価格交渉を行っている。



「……コペルニクス副師団長。
 もう城壁守備隊長じゃないのに、
 ここでなにやっているんですか?」

コペルニクス 「華麗なる高枝切りバサミを磨くにはここが一番落ち着くのだ。ちゃきーん。」

「そんなもの磨くのどこでも一緒なんじゃ……。」

コペルニクス 「……………………そんな、もの?ちゃきーん。」

「あ、あのー、睨まれても……。」

コペルニクス 「そんなものとは何事だ。
 よいか、この際だ。1から説明してやろう。
 そもそも華麗なる高枝切りバサミとは人間の考え出した究極の道具であり……」

「いえ、遠慮しておきたいんですけど。」

コペルニクス 「言うまでもなく人間の腕というのは軟体動物のように
 びにょんびにょんと手が伸びるわけではない。
 脊椎動物であるが故の定めを背負い……」

「いえ、あの、
 軟体動物だってそんな手の伸び方はしないと思うんですが……。
 って話聞くの遠慮したいんですけど……ちょっと人の話聞いてます?」

コペルニクス 「であるからしてびにょんびにょんの代わりに
 ちゃきんちゃきんと華麗なる高枝切りバサミが発明されたのは
 必然の結果であってそこから新たなる華麗なる高枝切りバサミちゃきーん伝説が……」


すたすたすた


コペルニクス 「おーい、無視するなぁ」



▽ 中央公園へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く

★★



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