「エリーゼ師団長って、どうして蹴り技を憶えたんです?」
「……理由、ねえ。
あるようでないのかもしれないわね。
はっきりとしたことは私にもよくわからないの。」
「?」
「でも小さい頃、ちょっとした事件に巻き込まれた事があって。
それをきっかけに確か決心したのよ。
大切な人を守りたい、失いたくないって。」
「???」
「なんて言うのかしら……ぼんやりとなんだけど、
とても哀しい思い出のような何かが心の中から溢れてきて。
今度は力ずくでも守らなきゃって。」
「?????」
「あ、ごめんなさい、変な話しちゃって。
自分でもよくわからないのにね……。
今の話、忘れてくれるかしら?」
「は、はぁ……。」
(いま一瞬、エリーゼ師団長の目がどこか遠くを、
今でない別の時代を眺めているような錯覚を憶えたんだけど……
気のせいだったのかなぁ?)
★★