Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
城壁

日差しをうけて白く輝く城壁。
そしてその城壁の下、同じ白さで輝く高枝切りバサミ。
季節が移り変わってもこの二つだけは変わらないものなのだろうか。

ついこの間まで城壁の上に常備されていた雪かき用のスコップは、もう季節的に必要ないと判断されたのか、兵舎に戻されてしまったようだ。

先ほどまで馬車の上で交渉していた商人達の姿もまばらになってきた。
どうやら交渉がてら昼食でも取りに行ったのだろう。



「エリーゼ師団長って、どうして蹴り技を憶えたんです?」

エリーゼ 「……理由、ねえ。
 あるようでないのかもしれないわね。
 はっきりとしたことは私にもよくわからないの。」

「?」

エリーゼ 「でも小さい頃、ちょっとした事件に巻き込まれた事があって。
 それをきっかけに確か決心したのよ。
 大切な人を守りたい、失いたくないって。」

「???」

エリーゼ 「なんて言うのかしら……ぼんやりとなんだけど、
 とても哀しい思い出のような何かが心の中から溢れてきて。
 今度は力ずくでも守らなきゃって。」

「?????」

エリーゼ 「あ、ごめんなさい、変な話しちゃって。
 自分でもよくわからないのにね……。
 今の話、忘れてくれるかしら?」

「は、はぁ……。」

(いま一瞬、エリーゼ師団長の目がどこか遠くを、
 今でない別の時代を眺めているような錯覚を憶えたんだけど……
 気のせいだったのかなぁ?)



▽ 中央公園へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く

★★



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