Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
住宅街

雪も解け、ゆるやかに春の風が舞うこの季節。
住宅街の所々でも花のつぼみがわずかに地面から顔を出し始めている。
それまで耐えてきた長い冬を乗り越え、夏の来ないこの地方でわずかな春の陽気を楽しむかのように。


街のあちこちから、子供達のはしゃぐ声が聞こえてくる。
子供達にとって屋外という絶好の遊び場は、冬だろうと春だろうと関係ないのかもしれない。



「あ、レナード将軍。」

レナード 「……秘書か。何の用だ?」

「そういうレナード将軍こそ、住宅街でなにやっているんですか?」

レナード 「……それで、何の用だね、秘書?」

「話逸らすし……まぁいいや。」

レナード 「こほん。早く用件に入りたまえ。」

「いえあのですね、ボイス元帥があれほどまでに侵入を阻止しろと
 言っている人物ってどんな人なのかなぁと。
 何も説明されませんでしたし……。」

レナード 「確かに剣の腕はたつ。
 その事は自他共に認めていたはずだ。
 彼と近い年代層の間では王立軍で1・2を争うほどの才能を持っていたからな。」

「かなりの剣の使い手なんですか?」

レナード 「ああ。
 最後に会った頃はまだ若かったが、
 あの頃から変わっていなければ前途はかなり有望だったはずだ。」

「へぇ……ところでその人の名前……」

レナード 「ところで今何時頃か分かるか?」

「は? え、えーと、午前9時すこし前だと思うんですが?」

レナード 「そうか。一度アリスさんのところに顔を出してみるか……」


すたすたすた


「あのー、レナード将軍、
 その人の名前が知りたいんですが……
 あーあ、行っちゃった。」



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