「レナード!」
「ん?
いい所にいた、ジュリアス。
先ほどの話の続きを聞かせてもらおう。」
「そう、さっき一つ言い忘れていたが、
存在そのものを抹消された第十三次北方調査隊だが、
そこに所属していた隊員のうち、一名だけは名前が判明している。」
「一人だけ? それで、その名前は?」
「エリック。エリック=ハミルトン。
スペルからはエーリッヒと読むこともできるが、
土地柄を考慮すればおそらくエリックと発音するのだと思う。」
「……ハミルトン?
待て、現在この国に駐在しているカイザリア大使の姓名も
ハミルトンだ。」
「なんだって?」
「……エリック=ハミルトンと、グラン=ハミルトン。
姓名の一致はただの偶然か、それとも親類か。
これは調べてみる必要がありそうだな……。」
「……諜報部も、楽じゃないねぇ。」
「ああ。公には存在していないことになっているからな。
だから予算とて限られている。
無論、人員もだ。」
「だから、俺達のように先代からこの国に仕えている者達ばかりが
選ばれているってわけか。
……ま、俺は大陸中駆けめぐって色々とおいしい物食えたからいいけど。」
「食い意地が張っているところ、間違いなく祖父の遺伝だな。」
「失敬な、ボイスのじじいと一緒にするなっ。」
「……あんなところにチョコチップクッキーが!」
「なにっ!?
どこだどこだっ!? チョコチップクッキー!?
おい、レナード、どこにあるんだっ!?」
「……………やっぱり遺伝だな、これは。」
★★