Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
城壁

夏のゆるやかな日差しが、城壁の白い輝きをより際だたせる。
日光の直接反射を防ぐために表面加工されているものの、
やはりその眩しさを完全に防ぐことは出来ないようだ。

だがその目映さは、色彩的なものだけではない。
先の大戦を守り抜いた、偉大な城壁への信頼の光なのかもしれない。

その一切継ぎ目のない城壁の前を、幾人かの兵士が巡回している。
高枝切りバサミの影は周囲に見あたらないようだ。



ボイス 「むむむ。そこにいるのは秘書ではないか。」

「あれ、ボイス元帥。
 おはようございます。
 どうしたんです?そんなに慌てて。」

ボイス 「うむ。少々緊急の人捜しをな。」

「人捜し?どうしたんですか?」

ボイス 「レミィ陛下を見かけなかったか?」

「いえ、いまさっき王城から降りてきたばかりなので。
 ……もしかしなくても、
 どこかで寝てるんじゃないですか?」

ボイス 「だから問題なのだ!
 この祭の前の忙しい時に、
 肝心のレミィ陛下はどこに行かれたのやら……。」

「はぁ……。
 とりあえず見かけたら王城に戻るように
 伝えればいいんですね?」

ボイス 「そうか、秘書。
 お前も手伝ってくれるというのか。
 よし、ならばわしは繁華街を、秘書は住宅……」

「あ、いえ、私は別の用事があるので。」

ボイス 「その用事と陛下の命、どっちが危機的状況だと思うかね!?」

「……レナード将軍に頼まれた用事の方が、
 別の意味で危機的状況かと。
 しくしくしく。」

ボイス 「む?その国旗、もしや式典のアレか?」

「ええ、そうです。」

ボイス 「くっ、式典舞踏の準備なら仕方有るまい。
 今回だけは見逃してやろう。
 しかし陛下は一体いずこに……むむむむむ。」

(ほっ、よかった。
 って『今回だけ』ってことは、
 次回は……?)



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