Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
住宅街

本来なら閑静なこの住宅街も、いつもより通行人が多く、
賑やかな声があちこちから聞こえてくる。

特に今は朝の静かなひとときのはずなのだが、
お祭りの前は時間を問わず例外的にその静けさが失われるようだ。

今日も夜まで、この活気が衰えることはなさそうだ。



「アークライト師団長、
 そういえばいつも緑色の鎧や服を着ていますけど、
 何か理由でもあるんですか?」

アーク 「うん。単に緑色が好きなんだ。
 僕も僕の父親も祖父もそのまた祖父も、
 みんな緑色が好きだったみたい。」

「どうしてまた?」

アーク 「迷彩色。」

「え?」

アーク 「これなら間違って木の上で迷子になっていても不自然じゃないでしょ?」

「……木の上で迷子になる時点で十分に不自然です。」

アーク 「じゃあ屋根の上で迷子になっていた方がいい?」

「……なんで高い所ばかりなんです?」

アーク 「さぁ、それが僕にもさっぱり。」

「…………。」

アーク 「あ、屋根の上なら屋根の色に合わせて
 鎧を毎回着替えるのはどうかな?
 うん、なかなかの名案かも。」

「いえ、ですからそういう問題ではなく……。」

アーク 「塗料を持ち歩いて屋根の色を変えていく方がいいかな?」

「あのー、それもまた問題点が何か違う気が。
 そもそも迷わなければいいだけの話だと
 思うんですが……。」

アーク 「うん、それが一番難しい問題だね。
 どうすれば迷わないで歩けるんだろう。
 さっぱり理解できないや。」


てくてくてく


「ってアークライト師団長っ!
 だからどこを歩いているんですかっ!?
 ベランダの柵の上なんて歩いてたら危険ですってばぁっ!」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く

★★



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