Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
繁華街

お祭りが近いとあって、街は普段よりも多くの人で溢れている。
本来なら街路樹の前後2メートル以内に出店が規制されているはずの露店も、
この時期ばかりは多少越えていてもお咎めはないようだ。

それもそのはず。
本来なら監視する側の王立軍の兵士達も、お祭りに浮かれているのだから。

昼時が近づいたためだろうか、朝よりもいっそう混雑してきた感がある。



ユリア 「おじーちゃん、どうしたの?
 柄にもなく花束なんか買っちゃって?
 その花、ミルククッキーの香りでもするの?」

ボイス 「いやなに。もうすぐイーディスの三回忌だと思ってな。」

ユリア 「そっか……もうあれから3年になるんだ。
 ねぇおじーちゃん、
 やっぱりおばーちゃんがいないと寂しい?」

ボイス 「うむ。そりゃぁな。
 だが考えようによっては、大戦前の平和な時に目を閉じることができて
 ある意味幸せだったのかもしれん。」

ユリア 「そうなの?」

ボイス 「少なくとも、世界を憂う必要はないじゃろうて。」

ユリア 「そっか……おじーちゃん、
 おばーちゃんの悲しい顔だけは見たくないって
 いつも言っていたもんね。」

ボイス 「うむ。」

ユリア 「ところで、どうやっておばーちゃんを口説いたのー?」

ボイス 「むぅ……どうでもいいではないか。」

ユリア 「えー、知りたい知りたいー☆」

ボイス 「……。
 『俺のために毎日ミルククッキーを作ってくれ』と
 言った記憶があるな。」

ユリア 「え、ちょっとおじーちゃーん、
 一体どういうシチュエーションになったら
 そういう言葉がでてくるわけー?」

ボイス 「………………。」

ユリア 「何遠い目してるのよ、おじーちゃん。」

ボイス 「いや、ちょっと昔をな。」

ユリア 「そんなに昔からミルククッキーが好きだったの?」

ボイス 「………………。」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 住宅街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く

★★★



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