「秘書さん。」
「あ、エリーゼ師団長。
おかえりなさいませ。
えーと、どこに出張されていたんでしたっけ?」
「バレンタイン港よ。戦後処理もようやく落ち着いたから、
修復を兼ねた再開発が本格的に始まることになったの。
それで視察に行ってきたんだけど……。」
「へぇ、どうでした?」
「まあまあってところかしらね。
早急に作られた計画にしては、なかなかだと思うわ。
復興を急ぐという意味では最善かもしれないわね。」
「と、いいますと?」
「本来なら一旦全て整地して、
新たに区画整理してから再開発したいところなんだけど、
予算も時間も人員もそれだけの余裕はないから、」
「今ある都市の形を生かして修復しながら
細かい路地や道路幅などを変更するのが、
国の案と住民の意見との折衷案としてふさわしいって事ね。」
「王立軍としては、防衛上の問題を解決するために
できれば都市を全面改造したい。
けど住民にとっては長年住んだ愛着のある街。」
「だから、バレンタイン出身の私が交渉役に
選ばれたらしいのよ。
とりあえずどっちも私の折衷案を受け入れてくれたみたいよ。」
「エリーゼ師団長って文武両道なだけじゃなく、
そういう仲裁も得意なんですね。
なんだかまた見直しました。」
「くすっ。
ありがと。
だけど、誉めても何もでないわよ。」
「けど、アシスト師団長にはとことん弱いんですね……。」
「そ、そんなことっ……ない……わよ。」
(あ、耳まで真っ赤になってる……。
本当にアシスト師団長に弱いんだ。
でも……あんな人のどこがいいんだろう?)
「ち、ちょっと用事を思い出したから
じゃ、じゃあ秘書さん、ま、また後でね。」
「……照れ隠しに走らなくてもいいのに。」
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