Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
住宅街

本来なら閑静なこの住宅街も、いつもより通行人が多く、
賑やかな声があちこちから聞こえてくる。

普段なら昼食の準備の音が聞こえてくるのだが、
今日ばかりはお祭り準備のにぎわいにかき消されてしまう。

年に一度のイベント、戴冠記念式典は一週間後に開催される。



エリーゼ 「秘書さん。」

「あ、エリーゼ師団長。
 おかえりなさいませ。
 えーと、どこに出張されていたんでしたっけ?」

エリーゼ 「バレンタイン港よ。戦後処理もようやく落ち着いたから、
 修復を兼ねた再開発が本格的に始まることになったの。
 それで視察に行ってきたんだけど……。」

「へぇ、どうでした?」

エリーゼ 「まあまあってところかしらね。
 早急に作られた計画にしては、なかなかだと思うわ。
 復興を急ぐという意味では最善かもしれないわね。」

「と、いいますと?」

エリーゼ 「本来なら一旦全て整地して、
 新たに区画整理してから再開発したいところなんだけど、
 予算も時間も人員もそれだけの余裕はないから、」

エリーゼ 「今ある都市の形を生かして修復しながら
 細かい路地や道路幅などを変更するのが、
 国の案と住民の意見との折衷案としてふさわしいって事ね。」

エリーゼ 「王立軍としては、防衛上の問題を解決するために
 できれば都市を全面改造したい。
 けど住民にとっては長年住んだ愛着のある街。」

エリーゼ 「だから、バレンタイン出身の私が交渉役に
 選ばれたらしいのよ。
 とりあえずどっちも私の折衷案を受け入れてくれたみたいよ。」

「エリーゼ師団長って文武両道なだけじゃなく、
 そういう仲裁も得意なんですね。
 なんだかまた見直しました。」

エリーゼ 「くすっ。
 ありがと。
 だけど、誉めても何もでないわよ。」

「けど、アシスト師団長にはとことん弱いんですね……。」

エリーゼ 「そ、そんなことっ……ない……わよ。」

(あ、耳まで真っ赤になってる……。
 本当にアシスト師団長に弱いんだ。
 でも……あんな人のどこがいいんだろう?)

エリーゼ 「ち、ちょっと用事を思い出したから
 じゃ、じゃあ秘書さん、ま、また後でね。」


すたすたすた


「……照れ隠しに走らなくてもいいのに。」



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▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ パン屋ソフトブレッドへ行く



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