Forbidden Palace Library #11 本意なき発言


王都シルバニア
中央公園

大陸の短い夏はあっという間に終わり、太陽は再び低い軌道を周りはじめる。
やがて陽光は街路樹をかすめるようになり、夜の長い冬が訪れる。

まるで木々がそのざわめきで、次なる冬の到来を出迎えているかのようだ。



「あ、画家のジェイムスさん。」

エディソン 「ほいほい、なんじゃい。
 おや、お前さんか。
 また何か忙しそうにしておるのぉ。」

「……いいですね、隠遁生活って。」

エディソン 「あまりそう気楽なもんではないがのぉ。
 若い頃は大陸各地を駆け回っておった。
 そろそろ終の棲家を見付けようと思うてな。」

「それで、シルバニアに?」

エディソン 「うむ、この都は美しい。
 生を終える時、その瞼の裏に焼き付けるには
 もっともふさわしい景観だとは思わぬかね。」

「……あ、そうだ。ちょっとお伺いしたいことが。」

エディソン 「なんじゃね?」

「大陸を駆け回っていたってことは、
 もしかしてこの公園の名前の由来についても、
 何か知っていたりします?」

エディソン 「……センティス公の話かね?」

「はい。」

エディソン 「占領された王城を奪還し、
 王族で唯一、王立軍を直接率いた
 偉大なる公爵じゃよ。」

「その奪還ってところなんですが、一体誰に占領されていたんです?」

エディソン 「……センティス公の敵は、
 ブランドブレイの7月騎士団と9月騎士団。
 かつての宗主国の一派じゃったのだよ。」

「え……!?」

エディソン 「結果的に市民はセンティス公を支持し、
 クーデターは失敗に終わり、王城は再び公の元へと戻った。
 しかし占領の動機については今以て謎が多いとされておる。」

エディソン 「その事件により、各頭領たる二家は断絶させられての。
 代わりに騎士家へ昇格となったのが、
 ノーベル家とラグランジュ家なのじゃよ。」

「ぇええ!?」

エディソン 「そんな大きな声出すほどのことかね、お嬢さん。」

「あ、いえ、申し訳ありません。初耳だったもので……。」

エディソン 「その興隆せしノーベル、ラグランジュの両家とも、
 今やブランドブレイには残っておらぬ。
 時代とは流れるものじゃのぉ。」

「は、はぁ……。」

(歴史の裏に、そんな大事件が……。)



▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く

★★



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