「なぁ、じいさんよ。」
「ほいほい、なんじゃい。
おや、こないだの赤毛の若者か。
どうした、この老いぼれに何か用かの?」
「じいさん、
前に指名手配がどうのとか言ってたよな。
ちょっとその話が気になって聞きに来たんだが……。」
「なんじゃ、逮捕かの?」
「いや、そういうわけじゃない。
師団長とかじゃなくてさ、
俺が単純に興味あるんだ。」
「……事の始まりは、もう500年近く昔の話じゃ。
いまどき銀狼帝の遺志などと言ったところで、
信じる者の方が少なかろうて。」
「銀狼帝……カイザリアの初代皇帝レイン?」
「うむ。
銀狼帝は生前、二つの至上命題を発した。
ひとつは失われた7枚と呼ばれる存在の探索。」
「そしてもう一つは、とある人物の世界からの抹消。」
「ぶっそうな話だな。つまり暗殺ってことだろ?」
「儂の持つ至上命題は、その物騒な後者の方でな。
以降、何世代にも渡り脈々と受け渡されてきた唯一つの命令。
ちょうど今から二十年前。それはこのシルバニアで……。」
「え、何世代ってどういうことだ?」
「……相手がただの人間ではなかったのじゃよ。」
「ただの、人間……ではない?」
「……儂はその存在を他に表現する言葉を知らぬ。」
「そうか、
俺の親父とお袋が若くして命を落としたのは……。
じいさんありがとよ、これで何かが繋がったぜ。」
「なんじゃ、
こういう昔話に興味があるなら、
いくらでも話してやるぞい?」
「おう、ちょっと急用できたんで、また今度頼むわ!」
「年寄りの話は最後まで聞くもんじゃ。
と……言いたいが、中には信用に値しない話というのも
中にはあるものじゃ。」
「……かつて、宰相エルネスト暗殺などという
狂気じみた絶対命令が存在したことを、
今の世で誰が信じるじゃろうか。」
★★