Forbidden Palace Library #11 本意なき発言


王都シルバニア
中央公園

大陸の短い夏はあっという間に終わり、太陽は再び低い軌道を周りはじめる。
やがて陽光は街路樹をかすめるようになり、夜の長い冬が訪れる。

いつもは水飛沫を吹き上げる噴水も、今日は休日のようだ。



ベル 「なぁ、じいさんよ。」

エディソン 「ほいほい、なんじゃい。
 おや、こないだの赤毛の若者か。
 どうした、この老いぼれに何か用かの?」

ベル 「じいさん、
 前に指名手配がどうのとか言ってたよな。
 ちょっとその話が気になって聞きに来たんだが……。」

エディソン 「なんじゃ、逮捕かの?」

ベル 「いや、そういうわけじゃない。
 師団長とかじゃなくてさ、
 俺が単純に興味あるんだ。」

エディソン 「……事の始まりは、もう500年近く昔の話じゃ。
 いまどき銀狼帝の遺志などと言ったところで、
 信じる者の方が少なかろうて。」

ベル 「銀狼帝……カイザリアの初代皇帝レイン?」

エディソン 「うむ。
 銀狼帝は生前、二つの至上命題を発した。
 ひとつは失われた7枚と呼ばれる存在の探索。」

エディソン 「そしてもう一つは、とある人物の世界からの抹消。」

ベル 「ぶっそうな話だな。つまり暗殺ってことだろ?」

エディソン 「儂の持つ至上命題は、その物騒な後者の方でな。
 以降、何世代にも渡り脈々と受け渡されてきた唯一つの命令。
 ちょうど今から二十年前。それはこのシルバニアで……。」

ベル 「え、何世代ってどういうことだ?」

エディソン 「……相手がただの人間ではなかったのじゃよ。」

ベル 「ただの、人間……ではない?」

エディソン 「……儂はその存在を他に表現する言葉を知らぬ。」

ベル 「そうか、
 俺の親父とお袋が若くして命を落としたのは……。
 じいさんありがとよ、これで何かが繋がったぜ。」

エディソン 「なんじゃ、
 こういう昔話に興味があるなら、
 いくらでも話してやるぞい?」

ベル 「おう、ちょっと急用できたんで、また今度頼むわ!」


たったったっ

エディソン 「年寄りの話は最後まで聞くもんじゃ。
 と……言いたいが、中には信用に値しない話というのも
 中にはあるものじゃ。」

エディソン 「……かつて、宰相エルネスト暗殺などという
 狂気じみた絶対命令が存在したことを、
 今の世で誰が信じるじゃろうか。」



▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く
▽ 住宅街へ行く

★★



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