(……ゴミ箱が勝手に揺れている。)
「……ひょっとしてマルス前師団長?」
「……んんん。
みつかっちゃったか。
かくれんぼの鬼、強いねぇ。」
「え、まだやっているつもりだったんですか?」
「んんん、でも僕も結構長く隠れてたでしょ。」
「いえ、そういう問題ではなく。」
「んんん、じゃあご褒美にいいこと教えて上げよう。」
「いいこと?ってなんですか?」
「……もしも君が幸せな人生を望むなら、
それがいつの時代であっても
絶対に会ってはならない人物がいる。」
「!?」
「その正体を知って生き延びた人間は、
僕の調べた限りでも、かの銀狼帝レインの他には
数えるほどしかいない。」
「……マルス前師団長?」
「もしくは、その存在を知って
人生を狂わせてしまった人間も多い。
……例えば君の、前任者のように。」
「!!!」
(私の前にいた、
先代の秘書さんが……!?)
「……秘書君。」
「はい?」
「例え僕が大陸のどこかで息絶えるようなことがあっても、
僕のこの名前だけは覚えておいてくれ。
マルス=アインシュタインという名前だけは。」
「……マルス=アインシュタイン。」
「それが、僕の伝えること全てだ。」
「どうして、そんなに悲愴な表情を?」
「……これ以上は言えない。
言えば、君も巻き込んでしまう。
……んんん、話が長くなりすぎたね。」
「じゃあ僕はまた長い長いかくれんぼに戻るよ。
もう、この国に戻ることは無いかもしれないけど。
今度は誰が鬼かなぁ。んんん、じゃね!」
「!!!」
(なんか意味ありげな言葉を残して消えたけど、
いったいどういう事なんだろう……?)
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