「あ、レナード将軍。」
「まったく、どこかに猫の手が余っていないものか。」
「やっぱり中央公園の猫でも連れてきましょうか?」
「どうせならシュレディンガー家の猫がいいぞ。」
「なんですか、それ?」
「シルバニアの隣国、ブランドブレイ王国で語られる伝説だ。
非常に聡明で、人語を解する猫がいたという。
真実かどうかは知らないが……。」
「え、猫がエングリシア語を喋るんですか?」
「いや、噂ではあくまで聞くだけが専門だったようだ。
ただ、人間の言う事は全て理解しているらしく、
どんな複雑な指示でもきちんとこなしたそうだ。」
「へぇ。
……それで、どうして『シュレディンガー家の猫』
なんて名前なんです?」
「その猫がシュレディンガー家にのみ生まれるからだ。」
「はい?」
「それも、代々たった一匹の猫のみが
その類い希なる聡明さを受け継ぐのだとか。
……ここまでいくと、もはや真実味は薄れるがな。」
「おとぎ話なんですか?」
「証拠はどこにもない。ただ、そういう噂があるというだけだ。
……と、用事があるんだった。
後は任せたぞ、秘書。」
「あ、将軍、そういえば一体どこに行かれるつもりで……って、
あれ、もういないっ!?
……いつも思うんだけど、なんでみんな逃げ足早いんだろう。」
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