Forbidden Palace Library #11 本意なき発言


王都シルバニア
繁華街

白銀の城壁に囲まれた都市、シルバニア。
普段はその内部へと馬車を進める事は法律で禁止されているが、
収穫季の一定期間に限り、特例として許可されている。

今は、大通りの両脇に荷馬車が溢れるという、
この都市では滅多に見られない光景が広がっている。



「あ、レナード将軍。」

レナード 「まったく、どこかに猫の手が余っていないものか。」

「やっぱり中央公園の猫でも連れてきましょうか?」

レナード 「どうせならシュレディンガー家の猫がいいぞ。」

「なんですか、それ?」

レナード 「シルバニアの隣国、ブランドブレイ王国で語られる伝説だ。
 非常に聡明で、人語を解する猫がいたという。
 真実かどうかは知らないが……。」

「え、猫がエングリシア語を喋るんですか?」

レナード 「いや、噂ではあくまで聞くだけが専門だったようだ。
 ただ、人間の言う事は全て理解しているらしく、
 どんな複雑な指示でもきちんとこなしたそうだ。」

「へぇ。
 ……それで、どうして『シュレディンガー家の猫』
 なんて名前なんです?」

レナード 「その猫がシュレディンガー家にのみ生まれるからだ。」

「はい?」

レナード 「それも、代々たった一匹の猫のみが
 その類い希なる聡明さを受け継ぐのだとか。
 ……ここまでいくと、もはや真実味は薄れるがな。」

「おとぎ話なんですか?」

レナード 「証拠はどこにもない。ただ、そういう噂があるというだけだ。
 ……と、用事があるんだった。
 後は任せたぞ、秘書。」

「あ、将軍、そういえば一体どこに行かれるつもりで……って、
 あれ、もういないっ!?
 ……いつも思うんだけど、なんでみんな逃げ足早いんだろう。」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
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