「選択肢は、多く見えて実は少ないのよ。」
「どういうことですか?」
「城壁守備隊の顧問以外にも、
王立軍の要職のいくつかが空席になったままなの。
だけど、そこに配置できるだけの人材がいない。」
「え、だって師団長6人もいるじゃないですか。」
「でもね、今の師団長達の中で、
シルバニア出身が何人いるかということ。
ロウクス君やベル君は外国出身だから……。」
「そんな制約があるんですか?」
「制約というよりは、しがらみと言った方が正しいかもしれないわね。
外国出身の王立軍司令官というだけで色々と風当たりが強いのに、
これ以上外部から睨まれるような事はできないのよ。」
「コペルニクス君は旧宗主国のブランドブレイ王国出身だから、
出身国という意味ではシルバニアと同格に扱われているけれど、
まだ副師団長に就いて日が浅いから……。」
「でも部下の一部に熱狂的な信者がいるみたいだし、
彼なら実務面では大丈夫だとは思うけど、
外部から見たら時期尚早な人事に映るかもしれないわね。」
(熱狂的な信者って……。)
「エリーゼ師団長は?」
「私? 全然経験が足りなすぎるわ。
なにより今の師団長たちの中で、
私だけが唯一エンディルとの実戦経験がないのよ。」
「……組織って色々とややこしいんですね。」
「それに第六師団の長には、本当は別の人が就く予定だったの。」
「え?他に候補がいたということですか?」
「ええ。先の大戦の英雄よ。
でも……傷が悪化して、バレンタインでそのまま
亡くなったらしいの。」
「そうなんですか……。」
「……この国も平和そうに見えるけど、
まだ戦後処理から抜け切れていないのよ。
色々と、ね。」
(師団長は師団長なりに大変なんだなぁ……。)
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