Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
アークライト邸

城壁の側、比較的分かりやすい区画に建っているアークライト邸。
大通りから家の玄関まで、綺麗に一直線の歩道が続いている。 にもかかわらずほとんどの足跡はその歩道に跡を残さず、むしろ庭の中のあちこちに残っている。

余談になるが、隣の家の表札にもアークライトと書かれている。
アークライト師団長の祖父や親が住む実家である。


「あのー、念のためにお伺いしますが……。」

コペルニクス 「ちゃきーん。
 この俺様の華麗なる高枝切りバサミに質問とはよい心がけだ。
 もちろん7段階に伸びるこのシャフトについてだな?」

「いえ、そうではなくて、
 あのですね、昨日の定例会議のあと、
 再び作戦会議室に戻ったということはありません?」

コペルニクス 「ちゃきーん。戻ったぞ。」

「時刻は覚えていらっしゃいします?」

コペルニクス 「ちゃきーん。たぶん午後6時頃だ。」

「……えっと、そこで白い封筒は見ませんでした?」

コペルニクス 「ちゃきーん。
 俺様がこの華麗なる高枝切りバサミで
 試し切りをしたあの封筒のことだな?」

「試し切りっ!?」

レナード 「……コペルニクス。どういうことだ?」

コペルニクス 「せっかく研いだこの刃を試し切りしたくてな。
 それで作戦会議室に行ったら机の上になにやら封筒があったから
 試しに斬ってみた。ちゃきーん。」

レナード 「それで、中を読んだのか?」

コペルニクス 「封筒の中には興味などない。
 俺様が興味あるのはこの華麗なる高枝切りバサミと
 手頃に斬りやすい紙だけだ。」

「『きる』の字がちょっと違うんじゃ……。」

コペルニクス 「…………。」

「いえ、あの、にらまれても。」

レナード 「つまり、人が丁寧に封をした手紙を開けた犯人はお前なのだな?」

コペルニクス 「ちゃきーん。イェッサー!」

「…………頭痛い。」

レナード 「それで、その封筒はどうした?お前が持っているのか?」

コペルニクス 「ちゃきーん。
 俺様は斬ることにのみ興味がある。
 封筒そのものには興味などない。」

「いえ、それはそれで何か問題ある気もするんですけど……。」


・・・


レナード 「話をまとめてみよう。」

「はい。」

レナード 「つまり、会議終了後、まずアシストとベルが再入室。
 そこで鬼ごっこをした後、入れ替わりにエリーゼが入室。
 散らかった室内を見て、書類を整理する。」

「そしてその後、コペルニクス師団長が部屋に入り、
 机の上にあった手頃な封筒を開封。ここまでで午後6時。
 ……ということは、問題はこの後ですね。」

レナード 「午後6時、コペルニクス入退室の後、アークが入室した午後7時までの間、
 誰が作戦会議室に入ったのかが問題か……。
 とすると残ったのは……」



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