Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
アシスト邸

王城から近い住宅街の一等地に存在するアシスト邸。
華やかさはなく、むしろ質素という言葉が似合う。

飾り気のない外壁は以前の持ち主の趣味なのか、それとも彼がそれを選んだのか。
どちらにせよ、機能美という言葉が相応しい。


「そういえばアシスト師団長ってよく空を飛んで逃げますよね。」

アシスト 「ああ。
 エアーフライトの魔導だな?
 逃げるにはレビテーションの魔導より便利だからな。」

「え?エアーフライトとレビテーションってどう違うんですか?」

アシスト 「まず、原理が根本的に違う。
 レビテーションは自身に掛かるの重力を制御することで
 大地の呪縛から離れ、浮遊する。」

アシスト 「それに対してエアーフライトは、自身の体重を擬似的に軽減し、
 揚力を発生させることで、自らの体を飛翔させる。
 つまり風に乗れば、理論上はいくらでも速度が出る。」

「なるほど。そういった違いがあったんですか。」

アシスト 「安定性の面では重力制御のレビテーションが上だけど、
 最高速度では風と一体化できるエアーフライトが勝っている。
 ま、両方とも一長一短だけどな。」

「でも、アシスト師団長はいつもエアーフライトを使っていますよね?」

アシスト 「ああ。それはやっぱり、発明者への贔屓があるからな。」

「ひいき?」

アシスト 「レビテーションの魔導はエルメキアで開発された。
 発明者の名はメルフィア=リリエンタール。
 歴史に名を残した女性魔導師だ。」

アシスト 「もう一方のエアーフライトだが、
 こちらを発明した魔導師の名はウォルター=ライト。
 実は、俺の遠い祖先にあたる。」

「なるほど、それでひいきしてるわけですね。
 ……その割には、いつもくだらないことで
 その魔導を行使していますよねぇ。」

アシスト 「何か言ったか、秘書?
 今もしかすると実験台になりたいとか
 そんなことを言わなかったか?」

「気のせいですよ。ええ、もちろん。
 やだなぁそんなこと言うわけないじゃないですかぁ。
 あ、レナード将軍の仕事がまだ残っているのでこれでっ!」


たったったっ


アシスト 「……ちっ、逃げたか。」



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★★



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